ありがとう、フォルカーせんせい
『ありがとう、フォルカーせんせい』を読みました。
あらすじ
トリシャは、絵を描くことが大好きな女の子です。
しかし、おしゃべりはできるのに、学校へ行くようになってからも文字や数字が読めません。
そして、トリシャが5年生になった時、新しい先生がやってきて……。
トリシャとフォルカー先生の心の交流が描かれた、作者の自伝的な絵本です。
見どころ
今回の見どころは、人との出会いと、個性を尊重することです。
トリシャは、絵を描くことが大好きな女の子です。
しかし、絵を描くことは得意でも、文字や数字を読むことはできません。
そのため、同級生からいじめられてしまいます。
そんな中、5年生になったトリシャのクラスに、新しい先生がやってきます。
それが、トリシャとフォルカー先生の出会いでした。
フォルカー先生は、よくトリシャの絵を褒めてくれます。
先生のおかげで、トリシャをからかう生徒は減りました。
しかし、同級生のエリックだけは別です。
エリックは、トリシャをいじめ続けます。
そんなある日、トリシャはフォルカー先生とゲームをします。
そこで、初めてフォルカー先生は、トリシャが本当に文字を読めないことに気付きます。
フォルカー先生は、トリシャの今までの頑張りを褒め、トリシャが字を読めるようになるまで特訓すると約束します。
それから、放課後の特訓が始まります。
何ヶ月も経った後、見たことのない本をトリシャに持ってきます。
そして、先生が指差した部分をトリシャが読むと……。
なんと、トリシャは文字が読めるようになっていたのです!
トリシャは家に帰り、嬉しさのあまりひとり泣きます。
その後、30年経ったある結婚式で、トリシャとフォルカー先生は再会します。
トリシャは、なんと作家になっていました。
それも、フォルカー先生との出会いがあったからです。
トリシャは、LD(学習障害)です。
LDとは、知的発達に目立った遅れはないのに、学習面で特異なつまづきや習得の困難さを示す子どもに対して使われる教育用語です。
今でこそ、学習障害という言葉は世間に徐々に浸透していますが、以前は聞き慣れない言葉だったことでしょう。
当時学校に通っていたトリシャは、さぞかし辛い思いをしただろうと推測することができます。
しかし、トリシャはフォルカー先生の個性を尊重した教育のおかげで、文字が読めるようになり、学校が大好きになります。
トリシャはおばあさんやフォルカー先生を通じて、個性を大事にすることを教わります。
また、トリシャは、人との交流を通じて段々と成長していきます。
人との出会いや個性を大事にすることの大切さが描かれた1冊です。
印象的なことば
みんなと ちがうってことは、いちばん すてきなことじゃないか。
おばあさんのトリシャに対する言葉です。
個性を大事にすることは、成長する上で大事なことです。
こんな言葉をかけてくれるおばあさんがいて、トリシャはさぞかし救われたでしょう。
感想
学習障害を題材に扱った絵本です。
名作と呼ばれる絵本はたくさんありますが、この絵本もまたそんな名作のひとつと言えるでしょう。
この絵本には、印象的な言葉がたくさん出てきます。
まさに、名言の嵐です。
それは、学習障害ではない人の心にも響く普遍的な言葉です。
この絵本のメッセージは、押し付けのようなものではなく、人の心に自然と入り込んでくるようなものです。
人は、自分と違う人間を、排除しようとしたりすることがあります。
そういった気持ちは誰にでもあるものですが、それが行き過ぎるといじめに繋がります。
フォルカー先生のように、ひとりひとりの個性を大事にする人が増えれば、もっと生きやすい世の中になるはずです。
この絵本を、ひとりでも多くの人に読んでもらいたいです。