死ぬまでに読みたい絵本

「日常に絵本を」をテーマに、大人も楽しめる絵本をご紹介するブログです。

しろいうさぎとくろいうさぎ

しろいうさぎとくろいうさぎ』を読みました。

 

しろいうさぎとくろいうさぎ (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)

しろいうさぎとくろいうさぎ (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)

 

 

あらすじ

 

白いうさぎと黒いうさぎは、広い森の中に住んでいました。

 

2匹は、毎日一緒に楽しく遊びます。

 

いつものように遊んでいると、黒いうさぎは座り込みました。

 

そして、とても悲しそうな顔をして……。

 

愛する人とずっと一緒にいたいと願う、うさぎたちのピュアなラブストーリーが描かれた絵本です。

 

見どころ

 

この絵本の見どころは、愛する人とずっと一緒にいたいという気持ちです。

 

一緒に楽しく遊んでいた2匹のうさぎですが、突然黒いうさぎがとても悲しそうな顔をします。

 

白いうさぎが理由を尋ねると、黒いうさぎは考え事をしていたと言います。

 

その後、何回も考え事をするたびに、悲しそうな顔をする黒いうさぎ。

 

「どうしたんだろう?」と思い読み進めると、その理由はなんと……。

 

黒いうさぎは、「いつまでも白いうさぎと一緒にいられますように」とお願いしていたのです!

 

そして、2匹のうさぎは結婚します。

 

愛する人とずっと一緒にいたいという気持ちは、誰にでもあるものだと思います。

 

しかし、それを素直に表現出来る人はなかなかいないのではないでしょうか。

 

この絵本では、黒いうさぎが素直に自分の考えていることを話したおかげで、2匹のうさぎは結ばれます。

 

このうさぎのように、素直に自分の気持ちを表現することで、恋愛がうまくいくこともあると思います。

 

素直な気持ちをぶつけてみることで、何かが開けるかもしれませんね。

 

うさぎのピュアな気持ちが心を揺さぶる1冊です。

 

印象的なことば

 

これからさき、いつも きみといっしょに いられますように!

 

黒うさぎの言葉です。

 

これは、プロポーズの言葉とも受け取れます。

 

ストレートな言葉が、心を揺さぶります。

 

感想

 

2匹のうさぎが結婚するまでを追ったラブストーリーです。

 

本書を、結婚のお祝いに贈る人もいるそうです。

 

確かに、結婚のお祝いにはぴったりな絵本ですね。

 

読んでいると、心が温かくなる1冊です。

 

一途に思い合ううさぎたちが可愛くて、思わず微笑んでしまいます。

 

出版されたのは、1965年と結構古い絵本ですが、言わずと知れた名作となっています。

 

今大切な人がいる人に、特にオススメの絵本です。

 

 

しろいうさぎとくろいうさぎ (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)

しろいうさぎとくろいうさぎ (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

100万回生きたねこ

100万回生きたねこ』を読みました。

 

100万回生きたねこ (講談社の創作絵本)

100万回生きたねこ (講談社の創作絵本)

 

 

あらすじ

 

100万回も死んで、100万回も生きたねこがいました。

 

100万人の人が、そのねこを可愛がり、そのねこが死んだ時には泣きました。

 

ある時、ねこは誰のものでもない、のらねこになります。

 

自分が大好きなねこは、めすねこたちにちやほやされて有頂天になります。

 

そこに、一匹の美しい白ねこが現れて……。

 

ねこの視点から、命の尊さが描かれた絵本です。

 

見どころ

 

今回の見どころは、命の重みです。

 

ねこは、100万回も死んで、100万回も生きています。

 

100万人の人が、ねこを可愛がり、ねこが死んだ時には泣きました。

 

しかし、ねこは1回も泣いたことがありません。

 

ねこは、死に対する恐怖や悲しみもなく、死ぬのも平気です。

 

王様、船乗り、手品師、どろぼう、おばあさん、女の子など、ねこは様々な人に飼われては死に、そしてまた生き返ります。

 

そして、あるときねこはだれのものでもない、のらねこになります。

 

ねこは自分が大好きで、めすねこたちにちやほやされて有頂天になります。

 

そこに、一匹の美しい白ねこがやってきて、ねこは魅了されます。

 

やがて、ねこと白ねこは結ばれ、白ねこは子どもをたくさん産みます。

 

ねこは、自分よりも大切な家族を持つことになります。

 

それから時が経ち、ねこたちは歳をとります。

 

そんなある日、白ねこが動かなくなり、天国へ旅立ちます。

 

その時、ねこは自分より大切な家族を失い、初めて泣きます。

 

その後、泣き止んだねこは、白ねこの後を追うように、天国へ旅立ちます。

 

そして、ねこはもう決して生き返りませんでした……。

 

はじめ、ねこは100万回も死んでいるので、死ぬのが痛くもかゆくもありませんでした。

 

しかし、愛する家族を失って、ねこは初めて命の尊さを知り、その生涯を静かに終えます。

 

死ぬということは、もう二度と一緒にいれないことなのです。

 

そのことを知ったねこは、悲しみを知り、涙します。

 

もしかしたら、ねこの輪廻転生は、命の重みを知るための長い旅だったのかもしれませんね。

 

命の尊さについて考えさせられる1冊です。

 

印象的なことば

 

ねこは、白いねこと いっしょに、いつまでも 生きていたいと 思いました。

 

 

死ぬのが平気だったねこが、愛する家族を持つようになって、ずっと一緒に生きたいとと願うようになります。

 

ねこの家族に対する愛情が伝わります。

 

感想

 

あまりにも有名な、佐野洋子さんの絵本です。

 

子ども向けの絵本ですが、大人も命について考えさせられる奥深い1冊です。

 

この絵本は、子どもの頃に読んだことがあったのですが、大人になってから読むとまた違う印象を持ちました。

 

むしろ、大人になって読んで、初めて意味がわかったように思います。

 

自分が家族を持つようになってから読むと、また違う印象を持つのかもしれません。

 

子どもも大人も楽しめる、まさに普遍的な名作ですね。

 

 

100万回生きたねこ (講談社の創作絵本)

100万回生きたねこ (講談社の創作絵本)

 

 

 

 

 

いいこってどんなこ?

『いいこってどんなこ?』を読みました。

 

いいこってどんなこ?

いいこってどんなこ?

 

 

あらすじ

 

うさぎのバニーぼうやが、お母さんに尋ねます。

 

「ねえ、おかあさん、いいこって どんなこ?」

 

バニーぼうやは、次々とお母さんに尋ねます。

 

そして、お母さんが問いに対して出した答えとは……。

 

子どもをありのままに受け止める、母親の愛情が優しく描かれた絵本です。

 

見どころ

 

今回の見どころは、ありのままを受け入れる母の無償の愛です。

 

バニーぼうやは、お母さんに「いいこってどんなこ?」と尋ねます。

 

お母さんは、バニーの問いに、ひとつひとつ優しく答えます。

 

その丁寧な受け答えは、これぞまさに母親の鏡と言える対応です。

 

バニーぼうやは、最後に「ぼくがどんなこだったら、1番嬉しい?」と聞きます。

 

お母さんは、「バニーは、バニーらしくしていてくれるのがいちばんよ」と答えます。

 

まさに、母親の無償の愛ですね。

 

人は、ありのままの自分を受け入れてくれるのが1番嬉しいものです。

 

今の自分に足りない部分を把握して、それを獲得するために頑張ることも大事です。

 

しかし、いつも「現在の自分」を否定していたら、辛くなってしまいます。

 

まずは、自分を肯定してあげることが大事なのです。

 

そして、自分を肯定してくれる他社の存在もまた必要不可欠なものです。

 

お母さんという存在は、時には叱ることもあるけれど、基本はいつも子どもの味方なのです。

 

そんな母親の無償の愛は、本当にありがたいものです。

 

印象的なことば

 

だって おかあさんは、いまの バニーが だいすきなんですもの

 

バニーが「ぼくがどんなこだったら1番嬉しい?」と聞きます。

 

それに対する、お母さんの言葉です。

 

お母さんは、ありのままのバニーが大好きなのです。

 

お母さんの愛情が伝わってきます。

 

感想

 

お母さんの愛情が、ひしひしと伝わってくる絵本です。

 

タイトルの「いいこってどんなこ?」という問いは、一度は誰もが考えたことのあるテーマなのではないかと思います。

 

私も、子どもの時に考えた記憶があります。

 

この問いの答えは十人十色だと思っていましたが、この絵本に模範解答が載っていました。

 

それは、「自分らしくしている子」だったのです。

 

そう、何も無理にいい子になろうとしなくても、あなたはあなたのままでいいんです。

 

難しい問いではなく、簡単なことだったんですね。

 

自分の個性を大切にすることが、大事ということですね。

 

シンプルながらも、力強いメッセージを感じます。

 

母親の究極の愛が、この絵本にあります。

 

 

いいこってどんなこ?

いいこってどんなこ?

 

 

 

 

 

おおきなテーブル

『おおきなテーブル』を読みました。

 

 

おおきなテーブル (絵本・いつでもいっしょ)

おおきなテーブル (絵本・いつでもいっしょ)

 

 

あらすじ

 

一人暮らしのうさぎのおばあさんが、かつては8人家族で囲んだ大きなテーブルにひとりで座っています。

 

おばあさんは、時間をさかのぼり、家族の思い出を辿っていきます。

 

そして、今まで見たことのなかったテーブルの裏に書かれた落書きを見ていたら……。

 

大きなテーブルをめぐる、うさぎの大家族の幸せな思い出が描かれた絵本です。

 

見どころ

 

今回の見どころは、うさぎの家族の幸せな思い出です。

 

この絵本では、うさぎのおばあさんが家族のことを思い出す形で、物語が進んでいきます。

 

おばあさんは、以前一緒にテーブルを囲んだ家族のことを次々に思い出します。

 

家族は、食事のときだけでなく、お茶を飲むときも、おしゃべりをするときも、いつもテーブルに集まりました。

 

しかし、おばあさんの息子や娘たちは、就職や結婚などで家を出ていきます。

 

子どもたちが家から出て行った後は、6匹の子どもが一堂に会することはありませんでした。

 

そんなことを思い出していると、ふとテーブルの裏の落書きのことを思い出します。

 

おばあさんは、実は一度もテーブルの裏の落書きを見たことがなかったのです。

 

おばあさんは、テーブルの下にもぐり込み、落書きのひとつひとつを辿ります。

 

そのうち、おばあさんの頭には、子どもたちの笑い声や泣き声が蘇ってきます。

 

そこに、末の息子が家に帰ってきます。

 

ふたりは、テーブルを囲んで世間話をします。

 

そこで、末の息子は来月のおばあさんの誕生日に、兄弟みんなで集まることを提案します。

 

末の息子が帰った後、おばあさんはみんなが集まることを想像し、微笑みます。

 

そして、みんなの好物を用意しようと思い、考えを巡らせます。

 

最後のページには、家族が集まった幸福な食卓が描かれています。

 

この絵本から、うさぎの家族の楽しい思い出が伝わってきます。

 

まるで、自分も家族の一員になったようです。

 

うさぎ一家のイラストも、見ているだけでほっこりします。

 

最初は、おばあさんがひとりぼっちで寂しそうでしたが、家族の楽しい記憶を思い出すと、おばあさんの顔に笑顔が戻ります。

 

楽しい思い出があるだけで、人は笑顔になれるものです。

 

そんな思い出があるというのは、幸せなことですね。

 

印象的なことば

 

いちどきに、みんなが ここへ……。ほんとに そうなると、うれしいがねえ

 

おばあさんの言葉です。

 

おばあさんの素直な心情が表れています。

 

おばあさんだけでなく、きっと家族みんなが、再び集まることを望んでいるのだと思います。

 

感想

 

うさぎの家族の幸せな思い出が描かれた1冊です。

 

おばあさんうさぎの気持ちが、よく描かれています。

 

一人暮らしの方は、おばあさんの気持ちがよくわかると思います。

 

なかなか頻繁に家族みんなが集まることは難しいと思いますが、時間を見つけて定期的に集まりたいものですね。

 

その際は、是非家族の好物をつくってあげてください。

 

きっと、絵本の最後のページのように、家族みんなが笑顔になるはずです。

 

家族のありがたみがわかる絵本です。

 

 

おおきなテーブル (絵本・いつでもいっしょ)

おおきなテーブル (絵本・いつでもいっしょ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トゥートとパドルーいちばんすごいプレゼントー

『トゥートとパドルーいちばんすごいプレゼントー』を読みました。

 

トゥートとパドル―いちばんすごいプレゼント

トゥートとパドル―いちばんすごいプレゼント

 

 

あらすじ

 

素敵な森や池に囲まれたウッドコック・ポケットにふたりで住んでいる、なかよしのトゥートとパドル。

 

トゥートのお誕生日が近づいてきて、パドルは何をプレゼントしようか頭を悩ませます。

 

そして、パドルが見つけたすごいプレゼントとは……。

 

特別な人への贈り物をめぐる、心温まる絵本です。

 

ポイント

 

今回のポイントは、特別な人へのプレゼントです。

 

パドルは、大切な「トゥート」のために誕生日プレゼントを町中探し回ります。

 

しかし、なかなか「これだ!」というものに出会えません……。

 

そして、ようやく見つけたのが、ペットショップで出会ったオウムのチューリップでした。

 

パドルは、とうとう決心し、トゥートにオウムをプレゼントすることにします。

 

しかし、どうやらトゥートはオウムが家に来て欲しくないようです。

 

パドルは、とんでもない間違いをしたことを後悔し始めますが、もう後には引けません。

 

誕生日の当日、パドルは勇気を出してトゥートにオウムをプレゼントします。

 

そして、オウムはトゥートに誕生日プレゼントとして自分のはねを差し出します。

 

トゥートは、誕生日プレゼントに驚きながらも喜びます。

 

特別な人のためにプレゼントを必死に探すパドルの姿が、微笑ましいですね。

 

特別な人に贈るプレゼントだからこそ、何を贈るか悩んでしまうことってありますよね。

 

パドルも、いろんなお店を見てまわり、プレゼントを渡す最後の最後まで、トゥートが喜んでくれるかどうか悩みます。

 

プレゼント選びには、大事な人を思う気持ちが詰まっています。

 

そんな気持ちが伝わったからこそ、トゥートはプレゼントを喜んだのだと思います。

 

印象的な言葉

 

だって、トゥートは、とくべつなんだもん……それが問題なんだよね。

 

パドルの言葉です。

 

トゥートが特別だからこそ、プレゼント選びは妥協できない。

 

特別な人を思う気持ちが伝わる言葉ですね。

 

作者の紹介

 

作者は、ホリー・ホビーです。

 

アーティストとして30年間活動し、挿画入り自叙伝に『ホリー・ホビーのアート』があります。

 

彼女にとって初めての絵本作品、『トゥートとパドルーふたりのすてきな12か月』は、アメリカの子どもたちに大好評でむかえられました。

 

本書は、シリーズ2作目にあたります。

 

訳者は、二宮由紀子です。

 

感想

 

本書は、トゥートとパドルシリーズの第2作目です。

 

可愛らしいこぶたのキャラクターに、癒されます。

 

特別な人への贈り物って、何を贈れば喜んでくれるのか1番悩みますよね。

 

特別な人だからこそ、つまらないものを選んで、がっかりさせたくないと思い、熱心に選んでしまうものです。

 

トゥートは、あまりオウムが好きではないようですが、パドルからのオウムのプレゼントを喜んでいます。

 

このことからもわかるように、プレゼントの内容よりも、人は自分のために選んでくれたという気持ちに感動します。

 

要は、ものよりも気持ちの方が大事ということですね。

 

そんな温かいメッセージが、この絵本から伝わってきます。

 

いま特別な人がいる人に、特にオススメです。

 

 

トゥートとパドル―いちばんすごいプレゼント

トゥートとパドル―いちばんすごいプレゼント

 

 

 

 

 

 

満月をまって

『満月をまって』を読みました。

 

満月をまって

満月をまって

 

 

あらすじ

 

今から100年以上前、アメリカのニューヨーク州ハドソンからそれほど遠くないコロンビア郡の山間で、かごを作って生活している人々がいました。

 

そこに住む主人公のぼくのお父さんは、満月の日にハドソンへかごを売りに行きます。

 

じょうぶで美しいかごは、伝統的な技法で作られています。

 

ぼくは、お父さんの仕事をよく見ていたおかげで、少しは手伝えるようになりました。

 

そして、9歳になった満月の日、ようやくお父さんはぼくをハドソンへ連れて行ってくれることになりますが……。

 

かご作り職人の静かな情熱や誇りが描かれた絵本です。

 

ポイント

 

今回のポイントは、かご作り職人の誇りや情熱です。

 

9歳になった満月の日、お父さんに連れられて、ぼくは初めてハドソンに行きます。

 

ぼくは、お父さんと一緒に金物店や食料品店へ行き、初めてのものに囲まれて、目がはなせなくなります。

 

帰り道、ぼくがお母さんにどんな土産話をしようか考えているところに、心無い言葉を浴びせかける男性が現れます。

 

男性は、お父さんとぼくに向かって、大声で罵声を浴びせます。

 

その内容は、お父さんが作っているかごやかご作り職人に対する悪口です。

 

お父さんは、「しらんぷりしていろ」と言ます。前にも何度か言われたことがあるのでしょう。

 

しかし、ぼくがこんなことを言われたのは初めてのことだったと思います。

 

そのため、この出来事はぼくにとってインパクトの大きなものとなり、暗い影を落とします。

 

その後、ぼくはかご作りを見に行くことができなくなってしまいます。

 

そして、何週間かたったある日、ぼくは納屋にしまってあるかごを蹴飛ばしてしまいます。

 

そこに、お父さんの仕事仲間のビッグ・ジョーがやってきて、ぼくに向かってこう言います。

 

「風からまなんだことばを、音にしてうたいあげる人がいる。詩をつくる人もいる。風は、おれたちには、かごをつくることをおしえてくれたんだ」

 

さらにこう続けます。

 

「風はみている。だれを信用できるか、ちゃんとしっているんだ」

 

これを聞いたぼくは、ハドソンで言われたことを気にしないようになり、お父さんたちのように、「風がえらんでくれた人」になりたいと願うようになります。

 

ビッグ・ジョーの含蓄ある言葉で、見事ぼくは嫌な出来事を乗り越え、改めてかご作り職人への道を志すようになります。

 

このことから、かご作り職人たちの、かご作りに対する静かな情熱や誇りを感じることができます。

 

人からどう言われようと気にせず、自分たちが信じたものを作り続けること。

 

これは、なかなか簡単にできることではありません。

 

まさに、かご作り職人たちのプライドのなせるわざですね。

 

印象的な言葉

 

きく耳があれば、きこえるよ

 

ビッグ・ジョーのぼくに対する言葉です。

 

仕事場で、お父さんたちが山の木がしてくれた話をしています。

 

ぼくも、山の木の声を聞きたいと思いますが、ぼくには聞えません。

 

そこで、ビッグ・ジョーがぼくに対して発した言葉です。

 

この時のぼくには、まだビッグ・ジョーが何を言いたいのかわかりません。

 

しかし、物語の最後の方で、ぼくはついに風の声が聞こえるようになります。

 

そこで、ようやくぼくはビッグ・ジョーの言葉を理解することになります。

 

この言葉は、シンプルながらも、深い言葉だと思います。

 

もしかしたら、聞えないのではなく、聞いていなかっただけなのかもしれませんね。

 

辛い経験を乗り越えたからこそ、わかる言葉だと思います。

 

作者の紹介

 

本書の作者は、作家であり環境保護活動家のメアリー・リン・レイです。

 

本書のイラストを手がけたのは、バーバラ・クーニーです。

 

1959年に『チャンティクリアときつね』、1980年に『にぐるまひいて』でカルデコット賞を、1982年に『ルピナスさん』で全米図書賞を受賞しています。

 

2000年、死去。残念ながら、本書が最後の作品となりました。

 

訳者は、掛川恭子です。

 

感想

 

2000年3月に亡くなった、絵本作家バーバラ・クーニーの最後の作品です。

 

この絵本の舞台は、100年以上前のアメリカですが、普遍的な物語になっていて、多くの日本人の心に響く作品となっています。

 

かご作り職人の美しい心や情熱が見事に描かれていて、読後に深い余韻を残します。

 

自分たちの職業や商品に誇りを持ち、周りの声に振り回されず、作り続けること。

 

これは職人だけでなく、様々な職業人が見習うべき姿だと思います。

 

本書では、父から子へと受け継ぐ伝統が、美しい絵と感動的な物語によって表現されています。

 

残念ながら、絵本に出てくるかごを最後まで作り続けていたひとりの女性も、1996年に亡くなってしまったそうです。

 

しかし、美しくてじょうぶなかごは残り続けます。

 

博物館や個人の納屋、アメリカの民芸品コレクションの中に、今でもかごは多く残っているそうです。

 

これを読んで、古くから伝わる伝統を守りたいと思う若い読者が増えるといいなと思います。

 

 

満月をまって

満月をまって

 

 

 

 

きりのなかのはりねずみ

『きりのなかのはりねずみ』を読みました。

 

きりのなかのはりねずみ (世界傑作絵本シリーズ)

きりのなかのはりねずみ (世界傑作絵本シリーズ)

 

 

あらすじ

 

日が沈み、あたりが薄暗くなってきた頃、はりねずみは、こぐまの家に出かけて行きます。

 

ふたりは仲良しで、いつもお茶を飲みながら、星を数えるのです。

 

はりねずみは、こぐまの好物の野いちごのはちみつ煮を持ち、こぐまの家へ向かいます。

 

道の途中、はりねずみは霧のなかに浮かぶ白い馬に出会います。白い馬に心を奪われたはりねずみは、霧のなかに入っていきますが……。

 

ポイント

 

今回のポイントは、はりねずみがこぐまの家にたどり着くまでの道のりです。

 

はりねずみは、こぐまの家にたどり着くまでに、ミミズクやしろいうまなど、様々な動物たちと出会います。

 

動物たちの中には、はりねずみを助けてくれない動物もいるけれど、助けてくれる動物もいます。

 

はりねずみはひとりで歩いてきたけれど、目的地にたどり着けたのは、動物たちとの出会いがあったからでした。

 

ひとりぼっちで目的地まで歩いて行くのは心細いけれど、勇気を出して進めば、そこには様々な出会いがあり、協力者も現れる。そして、いつの間にか目的地にたどり着いている。

 

ひとりで歩いてきたように見えても、振り返ってみると必ず誰かに支えられている。

 

これは、まさに人生と同じですね。

 

はりねずみが経験した冒険は、私たちが生きる人生にとてもよく似ています。

 

印象的な言葉

 

はりねずみは、こぐまのおしゃべりをききながら、こぐまくんといっしょはいいなとおもいました。

 

はりねずみの心の声です。

 

やっぱりひとりよりも、ふたりの方が心強いし、楽しいものです。

 

はりねずみは、ひとりでこぐまの家までやってきて、心細い思いをしたからこそ、そう思ったのですね。

 

作者の紹介

 

本書の作者は、ユーリー・ノルシュテインとセルゲイ・コズロフです。

 

ノルシュテインは、1941年ロシアのペンザ州アンドレーエフカ村に生まれます。

 

その後、61年にアニメーション美術上級コースを卒業します。

 

アニメーション作品としては、『きつねとうさぎ』『あおさぎとつる』『話の話』、絵本のもとになった『きりのなかのはりねずみ』などがあります。

 

コズロフは、1939年モスクワ生まれ。現代ロシアを代表する児童文学作家です。

 

また、本書のイラストは、フランチェスカ・ヤールブソワが手がけています。

 

彼女は、ノルシュテインの妻であり、ノルシュテインのアニメーション作品の美術監督でもあります。

 

感想

 

本書は、短編アニメーションの名作『きりのなかのはりねずみ』をもとに作られました。

 

監督は、世界中の映像作家に影響を与えたロシアのアニメーション作家、ユーリー・ノルシュテイン

 

児童文学作家セルゲイ・コズロフが物語を作り、美術監督フランチェスカ・ヤールブソワが絵を描いています。

 

第48回産経児童出版文化賞美術賞を受賞するなど、評価の高い絵本です。

 

魅力的な動物のキャラクターや幻想的な世界観に思わず引き込まれます。

 

イラストが芸術的で、まるで美術館で絵画を見ているようです。

 

また、はりねずみの体験する冒険が、私たちが生きる人生そのものと重なり、読後に静かな余韻を残します。

 

夜寝る前など、静かで美しい世界観に浸りたい時に、オススメです。

 

 

きりのなかのはりねずみ (世界傑作絵本シリーズ)

きりのなかのはりねずみ (世界傑作絵本シリーズ)