死ぬまでに読みたい絵本

「日常に絵本を」をテーマに、大人も楽しめる絵本をご紹介するブログです。

ラストリゾート

『ラストリゾート』を読みました。

 

ラストリゾート

ラストリゾート

 

 

何年か前に、絵本のガイドブックで知り、気になっていた絵本です。大人が楽しめる絵本になっています。

 

あらすじ

 

想像力をなくしてしまった画家は、想像力を探しに旅に出かけることにします。愛車に乗って、長い道をぬけ、誰も通らないような崖をすぎ、彼がたどり着いた先は、海辺にたつホテル「ラストリゾート」でした。しかし、そこにいたのはどこか変わった宿泊者たちで……。

 

想像力をなくした画家が体験する、不思議なリゾート・ホテルの物語です。

 

ポイント

 

今回のポイントは、登場人物たちです。

 

片脚の船乗りや白いドレスの女性など、この絵本に出てくる登場人物たちは、みんなどこかで見たことがある人ばかりです。

 

実は、彼らは有名なお話に出てくる登場人物や実在した人物なのです!

 

あとがきに、詳しい登場人物たちの紹介が載っています。

 

あとがきを読むと、登場人物の本当の姿がわかって面白いです。

 

私が気になったのは、白いドレスの女です。

 

白いドレスの女性は、実は人魚姫なのです。

 

小さな頃に人魚姫のお話を読んだときは、最後の結末に胸が締め付けられ、悲しい気持ちになったのを覚えています。

 

しかし、今回人魚姫はハッピー・エンドを迎えます!

 

白いスーツの背の高い男性と再会し、ふたりは一緒にラストリゾートを後にします。

 

思わず「よかったね」と心の中でつぶやきました。

 

印象的な言葉

 

なんだかうれしくなった。いつも思うのだが、詩は、声にだして読まれたがっているのだ。どんなに勝手な読まれかたでも、声にだして読まれたがっている。

 

主人公の画家の言葉です。

 

浜辺を散歩する詩人のエミリー・ディキンソンが詩をつぶやいているのを耳にしたことから、画家が発した言葉です。

 

詩は目で読んで味わうのもいいですが、この言葉の通り、声に出して読まれたがっているのかもしれません。

 

言霊という言葉もあるくらいですから、声にだして言葉にすることに意味があるのかもしれないですね。

 

絵本に関して言えば、普段は絵本を目で見て、読んで楽しんでいますが、声に出して読むことで、耳でお話を味わうことができますし、人にお話を伝えることもできます。

 

また、声にだして読むことで、新たな発見や楽しみがあったりもします。

 

このように、絵本も声にだして読まれたがっているのかもしれませんね。

 

作者の紹介

 

本書のイラストを担当したロベルト・インノチェンティは、1940年イタリア、フィレンツェ近くの小さな町に生まれます。

 

13歳のときから鋳鉄工場で働き、家計を支えます。

 

その後、専門的な美術教育を受けることはなく、独学でイラストレーターの道に進みます。

 

これまで、アニメーション、映画や劇場のポスター、本のデザイン、挿絵などに携わっています。

 

また、絵本も数多く出版しており、当作品で2003年ボローニャ・ラガッツィ賞フィクション部門特別賞を受賞しています。

 

実は、この絵本の主人公である画家は、彼自身のことだそうです。

 

本書で文を担当した、J・パトリック・ルイスは、詩人・絵本作家としても活躍し、子供に向けた作品は50を超えます。

 

感想

 

まさに大人向けの絵本で、絵と物語に引き込まれました。

 

自分もラストリゾートへ来た旅人になった気分です。

 

絵が想像力を掻き立ててくれ、さらに物語が詩的な世界にいざなってくれます。

 

まるで上質なロードムービーを観ているかのようです。

 

人間の生み出す想像力の豊かさに驚かされます。

 

絵や文章の力を、存分に感じることのできる完成度の高い1冊です。

 

 

ラストリゾート

ラストリゾート