『悲しい本』を読みました。
- 作者: マイケル・ローゼン,クェンティン・ブレイク,谷川俊太郎
- 出版社/メーカー: あかね書房
- 発売日: 2004/12/10
- メディア: 大型本
- 購入: 5人 クリック: 21回
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題名が気になり、手に取った絵本です。タイトルの通り、悲しみについての詩的な絵本です。最後は希望のある終わり方でよかったです。悲しいときに、繰り返し読みたい絵本です。
あらすじ
本書は、最愛の息子を失ったひとりの男性の物語です。男性は、さまざまな方法で、悲しみから逃れようとしますが、いつしかまた悲しみにのまれてしまいます。
そんな彼を救うのは、幸せな頃の記憶と、誕生日を祝うローソクの火……。
愛する者を失った悲しみを、徹底的に見つめ、表現した感動の絵本です。
ポイント
今回の注目ポイントは、主人公の最愛の息子を失った男性の、悲しみの気持ちです。
「悲しい」とひとことで言っても、そこにはたくさんの意味が詰まっています。
純粋な悲しさ、悲しみの原因への行き場のない怒り。
また、悲しい気持ちを他者へ伝えたい気持ちと、反対に誰にも話したくない気持ち。
そこには、複雑な気持ちが渦巻いています。
また、悲しいときは、塞ぎ込んだり、泣いたりするものと思いがちですが、それだけではありません。
シャワーを浴びながら大声で叫んだり、スプーンでテーブルをたたいたり、ときにはひどいことをすることもあります。
さらに、悲しみをやりすごす方法を考えたりもします。
このように、「悲しい」とひとことで言っても、そこには実に多様な気持ちや行動が含まれます。
本書では、悲しさを徹底的に見つめたことのある人にしかわからない、さまざまな表現がなされています。
また、言葉の表現に寄り添うような、クェンティン・ブレイクのユーモラスなイラストも必見です。
印象的な言葉
誰にも、なにも話したくないときもある。誰にも。どんなひとにも。誰ひとり。ひとりで考えたい。私の悲しみだから。ほかの誰のものでもないのだから。
主人公の男性のモノローグです。
この前のページでは、悲しい気持ちをなにもかも誰かに話したいときがあって、誰かを見つけて話すということが書いてあります。
しかし、次のページでは、誰にもなにも話したくないとあります。
一見矛盾しているように思いますが、これは自然な気持ちだと思います。
悲しいときに、誰かに何もかも話して、共感してもらい、スッキリしたいという気持ちもあります。
一方で、誰にも何も話したくないという気持ちのときもあります。
自分だけの悲しみに、ひとりで浸りたいという気持ち、わかる気がします。
そんなときは、自分の世界に入り、悲しみに浸った方がなんとなく落ち着くのかもしれません。
自分ひとりでとことん悲しん方が、案外スッキリすることもあるように思います。
ひとに話すことと、ひとりで考えること、どちらも大切ですよね。
その両方がないと、しっかり悲しめないのです。
そして、その両方がないと、先の希望へ近づく道が、逆に遠くなってしまうのだと思います。
きっと主人公の男性は、そのことをわかっているのだと思います。
作者の紹介
作者のマイケル・ローゼンは、1946年イギリスのサウス・ハーロウ生まれです。
オックスフォード大学卒業後、フリーランスのライター、教師、ジャーナリストを経験し、ラジオやテレビの仕事に携わります。
作家としては、イギリス国内のみならず、アメリカでも数多くの賞を受賞しています。
画家のクェンティン・ブレイクは、1932年イギリスのケント州生まれです。
また、数々の賞を受賞しており、1999年にはイギリス皇室から初代名誉児童文学作家の称号を授かっています。
また、訳者は言わずと知れた、日本を代表する詩人の谷川俊太郎です。
感想
この絵本は、ただ単に悲しいだけではなく、希望の絵本でもあります。
最後のページは、1本のローソクと写真立てを見つめる男性が描かれています。
完全なハッピーエンドではないのですが、希望のある終わり方になっています。
そこが、この絵本独自の味だと思います。
読後は、心にローソクの炎のような、あたたかな余韻が残ります。
現在、悲しみに包まれている人にオススメです。
特に、愛する人を失った人にオススメしたいです。
また、今は悲しくない人も、悲しみの形はいろいろとあるんだということと、悲しみの先には必ず希望があるんだということがわかる素晴らしい絵本なので、オススメです。
- 作者: マイケル・ローゼン,クェンティン・ブレイク,谷川俊太郎
- 出版社/メーカー: あかね書房
- 発売日: 2004/12/10
- メディア: 大型本
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