赤い蠟燭と人魚
『赤い蠟燭と人魚』を読みました。
あらすじ
北の海に、孤独な人魚がいました。
人魚は、生まれてくる子どもに同じ思いをさせたくないと思い、人間の住む町に子どもを産もうと決意します。
そして、人魚の娘は、町の蠟燭屋の老夫婦に引き取られることになります。
その後、人魚の娘は成長し、蠟燭に絵を描いて暮らします。
その蠟燭は、飛ぶように売れ、店は大繁盛します。
そこに、南の方の国から、噂を聞きつけた香具師がやってきて……。
美しい人魚が主人公の、悲しい物語が描かれた絵本です。
見どころ
今回の見どころは、人間の欲深さが招く惨事です。
この絵本のラストでは、人間たちの欲深さが災いを招き、町は亡びてしまいます。
私たちは、この絵本から学ぶべきことがあります。
それは、欲深さを改めることです。
人は、どうしても自分の利益を優先して行動してしまいます。
この絵本に出てくる年寄り夫婦も、自分たちのことを優先して、人魚の娘を香具師に売ってしまいます。
年寄り夫婦は、お金に心を奪われてしまったのです。
神様のお授けものとして、人魚の娘をそのまま大事に育てていたら良かったものの、目先の利益に囚われて、娘を売ってしまいました。
これは特殊な例ですが、こういったことは日常生活でもあることです。
それが小さなことならまだいいのですが、この絵本のように取り返しのつかないことになる場合もあります。
そのことをどうか忘れずに、日頃から欲を出さないように気をつけたいものです。
印象的なことば
子供から別れて、独りさびしく海の中に暮らすということは、この上もない悲しいことだけれど、子供がどこにいても、仕合せに暮らしてくれたなら、私の喜びは、それにましたことはない。
人魚の親の言葉です。
子どものことを強く想う気持ちが伝わってきます。
自分の幸せよりも、子どもの幸せを願う親の気持ちが涙をそそります。
この後の悲しい結末を考えると、切なくなります……。
感想
人魚たちが織り成す悲しい物語です。
結末も、ハッピーエンドではなく、悲しい終わりです。
人魚のお母さんの願いは叶うことがなく、人魚の娘が幸せになることもなく、最後には町が亡びてなくなってしまいます。
どこまでも悲しいストーリーなのですが、読者はこの美しい世界観に魅了されずにはいられないでしょう。
酒井駒子さんの絵が繊細で美しく、孤独な人魚の姿を見事に描き出しています。
どちらかと言うと大人向けの絵本ですが、子どもでも十分読めます。
親が子どもに、読み聞かせてあげるといいかもしれません。
残念ながらラストに救いはありませんが、この絵本は救いや希望を見出すのではなく、悲しみにどっぷり浸かるのがいいのではないかと思います。
悲しい結末ながらも、美しい絵本です。