ポテト・スープが大好きな猫
『ポテト・スープが大好きな猫』を読みました。
この絵本は、神保町の本屋で一目惚れして購入した絵本です。もともと猫が好きだったのと、村上春樹が翻訳しているところに魅力を感じました。
あらすじ
おじいさんは、雌猫とテキサスの田舎に住んでいました。ねずみも捕らず、のんびりと暮らす猫の好物は、おじいさんが作るポテト・スープです。おじいさんは、猫のことを気に入っているのですが、そんなそぶりはほとんど見せません。
ある日、おじいさんが魚釣りに出かけようとしますが、猫は眠り込んでいて起きません。おじいさんがひとりで魚釣りに出かけると……。おじいさんと猫の心温まるストーリーです。
ポイント
今回のポイントは、おじいさんと雌猫の絆です。
この絵本では、猫はただの猫ではなく、「雌猫」と書かれています。
この表現の通り、おじいさんと雌猫は、まるで長年連れ添った夫婦のようです。
普段は愛情表現をあまりしないおじいさんですが、本当は猫のことをとても大事に思っています。
そのことは、電気毛布をうちに持って帰ってきたり、ポテト・スープを作って猫のもとまで運んだりすることからわかります。
また、ひとりで魚釣りをしたり、食事をしている時のおじいさんの姿は、とても寂しそうです。
そのことからも、おじいさんの猫に対する愛情の深さがわかります。
また、ふたりの間からは、わざわざ言葉にしなくても、気持ちが通じ合っているような絆を感じ取ることができます。
印象的な言葉
お前は今のお前のままでいいんだからさ。
おじいさんが猫に言った言葉です。
以前、おじいさんは、猫がねずみも捕まえないことに対して、こう言いました。
「なんて猫だ、まったく。なんの役にも立たんのだからな。ねずみ一匹つかまえやしない」
しかし、猫が魚を捕まえてきた後には「でもな、お前、魚もねずみも、べつにつかまえなくたっていいんだよ」とおじいさんは猫に言います。
そして、こう言います。
「お前は今のお前のままでいいんだからさ」
このことから、おじいさんは猫のありのままを受け入れ、愛していることがわかります。
作者の紹介
絵本の作者は、テリー・ファリッシュです。
ニューハンプシャーのポーツマスに住むヤングアダルト小説の作家です。
主な著作には、『動物で会話』、『なぜ僕はもうブルーなの』、『海鳥の小屋』などがあります。
絵を担当したのは、バリー・ルートです。
彼は、絵本のイラストレーターとして、多数の作品のイラストを手がけています。
そして、訳は村上春樹です。
感想
おじいさんと雌猫の絆に心が温まります。
また、何と言っても、絵本に出てくる雌猫が魅力的です。
イラストのオレンジ色の毛並みが印象的で、読者の心を奪います。
そして、題名にも入っている「ポテト・スープ」がとてもおいしそうです。
本書に出てくる料理名はどれも印象的ですが、気になったのが「ブラックバード・パイ」です。
日本ではあまり馴染みのない言葉ですが、欧米では「ブラックバード・パイ」という有名な童謡があるそうです。
どうやら、おじいさんはその歌を思い出して言っているようで、本当にブラックバード・パイという料理があるわけではないそうです。
また、おじいさんもいい味を出しています。
この絵本では、おじいさんは猫以外と交流している場面がありません。
日本で言う「がんこじじい」のような人ですが、猫をとても可愛がっている心優しい人でもあります。
本書を読んでいると、おじいさんと猫の気ままな暮らしに憧れます。
大事な人にプレゼントしたくなる絵本です。
猫好きな人には、特にオススメです。