わすれられないおくりもの
『わすれられないおくりもの』を読みました。
あらすじ
アナグマはかしこくて、いつもみんなから頼られています。
困ってる友達を、誰でも助けてあげます。
それに、かなり歳をとっていて、物知りです。
アナグマは、自分の歳だと死ぬのがそう遠くはないことも知っていて……。
見どころ
今回の見どころは、亡くなっても残るものです。
アナグマは、死ぬことを恐れません。
なぜなら、死んで身体がなくなっても、心は残ることを知っていたからです。
ただ、後に残していく友人たちが気がかりでした……。
夜になり、アナグマは家へ帰ります。
夕ご飯を終えて、手紙を書き、揺り椅子に揺られていると眠ってしまいます。
そして、不思議な素晴らしい夢を見ます……。
次の日の朝、キツネがみんなに伝えます。
アナグマは亡くなってしまったのです……。
キツネは、アナグマが残した手紙を読みます。
アナグマは、森のみんなの人気者でしたので、みんなは悲しみに暮れます。
とりわけ、モグラは深い悲しみに包まれます。
その夜雪が降り、冬が始まります……。
みんなは、アナグマの不在に途方に暮れます。
そして、春が来ると、みんなは互いに行き来して、アナグマの思い出を語り合います……。
モグラの切り抜き、カエルのスケート、キツネのネクタイ、ウサギの奥さんの料理……。
それらの思い出には、いつもアナグマが居ました。
ある春の日に、モグラは丘に登り、アナグマにお礼を言います……。
この絵本では、森の動物たちがアナグマの喪失から立ち直り、アナグマが残してくれたものに感謝できるようになるまでが描かれています。
大事なひとが亡くなると、まわりのみんなは悲しみに暮れます。
悲しみに暮れることは自然なことで、必要なことでもあります。
しかし、いつまでも悲しみに暮れてばかりでは、生活ができません。
アナグマの言うように、死んで身体がなくなっても、心は残るのです。
また、その心は、人々の心の中に生き続けます。
アナグマが教えてくれた、暮らしの知恵や技はいつまでもなくなりません。
それを大切にすることが、みんなが幸せになる方法でもあるのです。
印象的なことば
長いトンネルの むこうに行くよさようなら アナグマより
アナグマの最期の手紙の言葉です。
天国、あちらの世界、あの世など、様々な言い方がありますが、
長いトンネルの向こうという表現は、なかなかいい表現だと思います。
上下に分けられていなくて、トンネルを通じて横に繋がっているような、そんな感覚でしょうか。
みんなを悲しませないように配慮した、アナグマの思いが伝わってきます。
感想
有名な絵本のひとつです。
「死ぬまでによみたい絵本」というブログのテーマにもピッタリ合っている一冊だと思います。
まさに王道の感動的な絵本で、生と死が子どもでもわかるように、描かれています。
また日本語のタイトル「わすれられないおくりもの」というのがいいです。
原題は、「BADGER’S PARTING GIFTS」です。
訳すと、「アナグマの別れの贈り物」になります。
こちらもいいのですが、わかりやすいというか、ちょっと直接的な感じがしますね。
日本語版の奥ゆかしい感じが、逆に印象的です。
生と死について考えさせられる名作です。