手ぶくろを買いに
『手ぶくろを買いに』を読みました。
あらすじ
寒い冬が、きつねの親子の棲んでいる森にもやってきます。
ある朝、洞穴から子どものきつねが出ようとしますが……。
きつねの親子と人間社会を描いた名作です。
見どころ
今回の見どころは、捨てたもんじゃない人間社会です。
きつね親子が棲む森に、冬がやってきます。
目に何か刺さったと感じた坊やは、お母さんに駆け寄ります。
しかし、それは雪の反射のせいでした。
坊やは、雪を知らなかったのです。
雪が積もった中、坊やは遊びに出かけます。
まもなく坊やが洞穴へ帰ってくると、坊やの手はかじかんでいます。
お母さんは夜になったら町へ行って、坊やに毛糸の手袋を買ってあげようと思います。
夜に親子は出かけていくと、街の灯が見えてきます。
お母さんは、昔町へ行ってひどい目に遭ったことを思い出し、足がすくみます……。
仕方なく、坊やだけをひとりで町まで行かせることになります。
そして、お母さんは坊やの片方の手を、可愛い人間の手にします。
お母さんは坊やに、手袋の買い方、人間の怖さを教え、お金を与えます。
坊やは、街の灯を目当てに、野原を歩きます。
やがて町に入り、坊やは帽子屋を見つけます。
坊やは戸を叩き、戸が開くとまばゆい光が差し込みます。
そのせいで、坊やは間違った方の手を隙間から差し込んでしまいます……。
帽子屋さんはきつねの手だと気付き、先に代金を請求しますが、坊やがちゃんとお金を払ったので、子供用の手袋を坊やに持たせてあげます。
坊やは窓から人間の子守唄を聞き、うっとりします。
坊やは人間親子の会話を聞いて、急にお母さんが恋しくなり、お母さんの待つ場所へ向かいます。
お母さんは坊やを心配していたので、坊やを抱きしめ、泣きたいほど喜びます。
帰り道、坊やは人間は怖くなかったと言います。
お母さんは呆れながらも、人間はいいものかしらとつぶやくのでした……。
この絵本では、捨てたもんじゃないなと思わせる人間社会が、きつね親子の視点から描かれています。
お母さんも、人間のことを100パーセント信頼したわけではないけれど、人間の優しさも感じたのだと思います。
坊やも、人間の優しさを、町に行ったことにより、身近に感じたことでしょう。
殺伐とした世の中にも、優しさは見いだせる、そんな希望が見えてくる物語です。
印象的なことば
ほんとうに人間はいいものかしら。ほんとうに人間はいいものかしら。
最後のページにある、お母さんの言葉です。
戸惑い、少し信頼したい気持ちが混ざり合った、素直な気持ちだと思います。
お母さんの気持ちがよく表れた言葉です。
感想
言わずと知れた名作絵本です。
私が小学生の頃にも、教科書に載っていたと思います。
淡いイラストが印象的で、
文章も詩的で自然の描写も美しく、
内容もテーマが明確で、
まさに名作と呼ばれるにふさわしい絵本です。
小学生の頃に読んでから、ずっと印象に残ってました。
100パーセント人間を信用したわけではないけど、人間社会も捨てたもんじゃないなと思える、人間の優しさも描かれていて、希望を感じます。
大人になってから読み返すと、お母さんの目線で読む方も多いかなと思いました。
人生で一度は読みたい絵本です。