『にいさん』を読みました。
あらすじ
ぼくには、にいさんがいた。
空がきみをかくしている。
空の高いところで鳥が鳴いた。
でも、きみはどこにいる……。
弟のテオの視点で語られる、画家の人生が描かれた物語です。
見どころ
今回の見どころは、兄と弟の深い結びつきです。
この絵本では、弟のテオの視点から、画家で兄のゴッホの生涯が描かれています。
そこには、常に兄と弟の深い結びつきがあります。
孤独な画家の兄を、弟は献身的に支えます。
テオは、ただ兄だから支えているだけではなく、兄を尊敬し愛しているからこそ、支えているのです。
兄は弟の愛情に支えられ、弟は兄に憧れを持ち、刺激を受けます。
ゴッホの人生は波瀾万丈で、いい時よりも、むしろ辛い時の方が多いかもしれません。
それでも、弟のテオは、兄を見放さず、兄が亡くなるまで、献身的に支え続けます。
なぜ、それほど支えられるのでしょうか。
それは、テオのこの言葉に表れていると思います。
にいさんは、ぼくのすべて、ぼくだけのにいさんだったのです!
テオにとって、ゴッホは自分自身のすべてだったのでしょう。
人生のすべてとも、言い換えられるかもしれません。
だからこそ、あれほどまでに、兄を支え続けたのです。
なんとも美しい兄弟の絆だと思います。
素晴らしい兄弟の絆が感じられる名作です。
印象的なことば
ぼくに未来はあるだろうか。あるさ、だって空には無数の星があって、ひとつがだめでも、どれかひとつくらいはぼくの星さ
ゴッホの言葉です。
ゴッホがついに、絵描きになるという目的を見つけたときの、言葉です。
ゴッホの未来に対する前向きな姿勢が、感じ取れます。
実際、ゴッホのその後の人生は、残念ながら安定したものではありませんでした。
しかし、このような言葉を、いくつも残したゴッホ。
彼の絵や言葉は、時代や国を超えて、今でも愛されています。
感想
弟のテオから見た、兄のゴッホが描かれた絵本です。
タイトルのにいさんとは、ゴッホのことです。
私は、ゴッホが大好きなので、この絵本は以前から気になっていました。
ゴッホに関する絵本や本はたくさん出ていますが、この絵本はその中でも好きな作品です。
絵も繊細で素晴らしいし、文章も詩的で、強く胸に響きます。
ゴッホの生涯がメインに描かれていますが、人生の光と影が描かれた独自の絵本になっています。
大人にじっくり読んで欲しい作品ですが、子どもにこの絵本を読んでもらって、ゴッホの絵に興味を持ってもらえたら、私としても嬉しいです。
ゴッホのファンの方も、そうでない方にも、オススメの一冊です。