黒グルミのからのなかに
『黒グルミのからのなかに』を読みました。

- 作者: ミュリエルマンゴー,カルメンセゴヴィア,Muriel Mingau,Carmen Segovia,ときありえ
- 出版社/メーカー: 西村書店
- 発売日: 2007/08/01
- メディア: 大型本
- クリック: 42回
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あらすじ
ポールという男の子が、漁師村の近くの小さな家に、お母さんとふたりで暮らしています。
ある朝、ポールは、胸騒ぎを感じます。
なぜなら、いつも台所に立っているお母さんが、見えなかったからです。
ポールは外に出て、お母さんを探し回りますが、見つかりません。
そして、お母さんの部屋を見に行くと、お母さんがベッドに横たわっていて……。
生と死について考えさせられる一冊です。
見どころ
今回の見どころは、生と死の関係です。
ポールは、漁師村の近くの小さな家に、お母さんとふたりで暮らしています。
ある朝、ポールは胸騒ぎを覚えます。
いつもなら、とっくに台所に立っているお母さんが、見えなかったからです。
ポールがあちこち探しますが、見つかりません。
そこで、あっと気づいて、お母さんの部屋を見に行きます。
すると、お母さんはベッドに横たわり、目を閉じています。
ポールが声をかけると、お母さんは、「わたしは、もうすぐ死ぬわ」と言います。
ポールは、驚きます。
お母さんは、死神がやってくると言います。
ポールは、お母さんのために薬を買いに、漁師村へと駆け出します。
ポールが浜辺に沿って歩いて行くと、はるか向こうに人影が見えます。
その黒マントの人は、ポールのそばまでやってきて、この辺りにある小さな家のことを尋ねます。
そのとき、その黒いマントとフードがめくれ、恐ろしい老婆の顔と大きなカマが見えます。
なんと、その老婆は死神だったのです。
そうとわかると、ポールは死神に飛びかかり、戦います。
ポールは、カマの柄でたたいて小さくなった死神を、落ちていた黒グルミのからの奥に押し込み、小枝で穴を塞ぎ、海へ放り投げます。
そして、ポールは家に戻り、刃のこぼれたカマを隠します。
台所に行くと、お母さんがいます。
お母さんは、オムレツを作るところです。
ポールは、まさかと目を疑いますが、どうやら死神は何もできなくなったようです。
ポールは、お母さんに頼まれて、卵を割ろうとしますが、何故か割れません。
さらに、庭の畑で野菜を引き抜こうとしても、抜けません。
お母さんは、ポールに漁師村へ行って、魚を買ってくるように言います。
ポールが再び漁師村へ行くと、広場に人だかりができています。
漁師や肉屋が、文句を言って、怒っています。
なんと、ポールがしたことによって、全てのものが死ななくなったのです。
家に帰ったポールは、仕方なく、お母さんに「何も買えなかった」と言います。
お母さんは驚いて、わけを尋ねます。
ポールが、死神と戦ったことや黒グルミのからに閉じ込めたことを話すと、お母さんはたいそう驚き、悲しみます。
お母さんはポールに、自然の流れを戻すように言います。
ポールは、お母さんのためなら、どんなことでもするつもりなので、お母さんに従います。
あくる朝はやく、ポールは、浜にやってきます。
ポールは、空のカモメに尋ねますが、黒グルミには気付かなかったと言います。
ポールは、黒グルミを探して、何時間も浜辺を歩きますが、夜になっても見つからず、砂の上で眠ってしまいます。
明け方、ポールはカニに足をつままれて、目を覚まします。
ポールは、カニに黒グルミのことを尋ねると、カニは物知りオオハタのところに連れて行ってくれると言います。
ポールがカニと一緒に、海に潜って行くと、オオハタがいます。
オオハタは、魚たちに黒グルミを探すように言います。
すると、一匹のカニが、ポールが投げたその浜で、黒グルミが見つかったと言います。
ポールは、魚の群れとともに、浜へと急ぎます。
黒グルミは、岩の間に挟まっていました。
ポールは、黒グルミの穴に挿した小枝を引き抜きます。
すると、死神が小さな頭を覗かせます。
ポールは、今にも泣き出しそうです。
なぜなら、お母さんのことを考えていたからです。
自由の身になれば、死神は再びお母さんを連れて行くでしょう。
ポールはためらいながらも、覚悟を決め、殻を握りつぶします。
死神は、元の大きさに戻ります。
ポールは、死神を家に連れて行き、壊れたカマを返します。
ポールは、お母さんのことを思うと、胸が張り裂けそうです。
すると、死神が自分を自由にしてくれたお返しに、お母さんを連れて行くのは、今はやめにしようと言います。
死神が立ち去り、ポールは心からホッとします。
その日から、ポールとお母さんは、長いこと幸せに暮らします。
死神が、再びやってきたときには、お母さんは100歳を超えるおばあさんになっていました。
ポールは、穏やかな気持ちで、お母さんを送り出します。
死があってこそ、生があることを、ポールはわかっていたからです。
この絵本では、死神を黒グルミに閉じ込めたことによって、引き起こされることが描かれています。
それは、全てのものが、死ななくなるということです。
そうなると、自然の流れが止まってしまい、不具合が出てきてしまいます。
そのことを知ったポールは、黒グルミを探し回り、死神を元に戻します。
しかし、ポールはお母さんが死神に連れて行かれることを思うと、胸が張り裂けそうになります。
しかし、ポールの思いが通じたのか、死神のはからいによって、お母さんは一時的に救われます。
その後、ポールは長いときをお母さんと幸せに過ごします。
その過程で、死があってこそ、生があることを改めて学んだのでしょう。
最後に、ポールは穏やかな気持ちで、お母さんを送り出します。
この絵本の中心にあるのは、生と死の関係です。
生と死は、関係のないもの同士ではなく、どちらもあるからこそ、成り立つ関係なのです。
命の尊さや死の必要性が、すんなりと入ってくる、不思議な絵本です。
大人が読んでも、学ぶことの多い一冊です。
印象的なことば
ポールは、おだやかな気もちで、かあさんをおくりだしました。
なぜって、「死」があってこそ、「生」はあるのですから。
ポールには、とっくにそのことがわかっていました。
ポールは、死があるから生もあることを、死神との出会いによって知ります。
そのおかげで、お母さんを穏やかに送り出すことができました。
感想
死神から、お母さんを助けようとする少年の物語です。
雰囲気のあるイラストや、風変わりな物語の世界に、どんどん引き込まれました。
この絵本を読んで、改めて生と死は共存しているのだと感じました。
生と死について、考えさせられる一冊です。
大人がじっくり読むのにオススメです。

- 作者: ミュリエルマンゴー,カルメンセゴヴィア,Muriel Mingau,Carmen Segovia,ときありえ
- 出版社/メーカー: 西村書店
- 発売日: 2007/08/01
- メディア: 大型本
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