死ぬまでに読みたい絵本

「日常に絵本を」をテーマに、大人も楽しめる絵本をご紹介するブログです。

黒グルミのからのなかに

『黒グルミのからのなかに』を読みました。

 

 

黒グルミのからのなかに

黒グルミのからのなかに

 

 

あらすじ

 

ポールという男の子が、漁師村の近くの小さな家に、お母さんとふたりで暮らしています。

 

ある朝、ポールは、胸騒ぎを感じます。

 

なぜなら、いつも台所に立っているお母さんが、見えなかったからです。

 

ポールは外に出て、お母さんを探し回りますが、見つかりません。

 

そして、お母さんの部屋を見に行くと、お母さんがベッドに横たわっていて……。

 

生と死について考えさせられる一冊です。

 

見どころ

 

今回の見どころは、生と死の関係です。

 

ポールは、漁師村の近くの小さな家に、お母さんとふたりで暮らしています。

 

ある朝、ポールは胸騒ぎを覚えます。

 

いつもなら、とっくに台所に立っているお母さんが、見えなかったからです。

 

ポールがあちこち探しますが、見つかりません。

 

そこで、あっと気づいて、お母さんの部屋を見に行きます。

 

すると、お母さんはベッドに横たわり、目を閉じています。

 

ポールが声をかけると、お母さんは、「わたしは、もうすぐ死ぬわ」と言います。

 

ポールは、驚きます。

 

お母さんは、死神がやってくると言います。

 

ポールは、お母さんのために薬を買いに、漁師村へと駆け出します。

 

ポールが浜辺に沿って歩いて行くと、はるか向こうに人影が見えます。

 

その黒マントの人は、ポールのそばまでやってきて、この辺りにある小さな家のことを尋ねます。

 

そのとき、その黒いマントとフードがめくれ、恐ろしい老婆の顔と大きなカマが見えます。

 

なんと、その老婆は死神だったのです。

 

そうとわかると、ポールは死神に飛びかかり、戦います。

 

ポールは、カマの柄でたたいて小さくなった死神を、落ちていた黒グルミのからの奥に押し込み、小枝で穴を塞ぎ、海へ放り投げます。

 

そして、ポールは家に戻り、刃のこぼれたカマを隠します。

 

台所に行くと、お母さんがいます。

 

お母さんは、オムレツを作るところです。

 

ポールは、まさかと目を疑いますが、どうやら死神は何もできなくなったようです。

 

ポールは、お母さんに頼まれて、卵を割ろうとしますが、何故か割れません。

 

さらに、庭の畑で野菜を引き抜こうとしても、抜けません。

 

お母さんは、ポールに漁師村へ行って、魚を買ってくるように言います。

 

ポールが再び漁師村へ行くと、広場に人だかりができています。

 

漁師や肉屋が、文句を言って、怒っています。

 

なんと、ポールがしたことによって、全てのものが死ななくなったのです。

 

家に帰ったポールは、仕方なく、お母さんに「何も買えなかった」と言います。

 

お母さんは驚いて、わけを尋ねます。

 

ポールが、死神と戦ったことや黒グルミのからに閉じ込めたことを話すと、お母さんはたいそう驚き、悲しみます。

 

お母さんはポールに、自然の流れを戻すように言います。

 

ポールは、お母さんのためなら、どんなことでもするつもりなので、お母さんに従います。

 

あくる朝はやく、ポールは、浜にやってきます。

 

ポールは、空のカモメに尋ねますが、黒グルミには気付かなかったと言います。

 

ポールは、黒グルミを探して、何時間も浜辺を歩きますが、夜になっても見つからず、砂の上で眠ってしまいます。

 

明け方、ポールはカニに足をつままれて、目を覚まします。

 

ポールは、カニに黒グルミのことを尋ねると、カニは物知りオオハタのところに連れて行ってくれると言います。

 

ポールがカニと一緒に、海に潜って行くと、オオハタがいます。

 

オオハタは、魚たちに黒グルミを探すように言います。

 

すると、一匹のカニが、ポールが投げたその浜で、黒グルミが見つかったと言います。

 

ポールは、魚の群れとともに、浜へと急ぎます。

 

黒グルミは、岩の間に挟まっていました。

 

ポールは、黒グルミの穴に挿した小枝を引き抜きます。

 

すると、死神が小さな頭を覗かせます。

 

ポールは、今にも泣き出しそうです。

 

なぜなら、お母さんのことを考えていたからです。

 

自由の身になれば、死神は再びお母さんを連れて行くでしょう。

 

ポールはためらいながらも、覚悟を決め、殻を握りつぶします。

 

死神は、元の大きさに戻ります。

 

ポールは、死神を家に連れて行き、壊れたカマを返します。

 

ポールは、お母さんのことを思うと、胸が張り裂けそうです。

 

すると、死神が自分を自由にしてくれたお返しに、お母さんを連れて行くのは、今はやめにしようと言います。

 

死神が立ち去り、ポールは心からホッとします。

 

その日から、ポールとお母さんは、長いこと幸せに暮らします。

 

死神が、再びやってきたときには、お母さんは100歳を超えるおばあさんになっていました。

 

ポールは、穏やかな気持ちで、お母さんを送り出します。

 

死があってこそ、生があることを、ポールはわかっていたからです。

 

この絵本では、死神を黒グルミに閉じ込めたことによって、引き起こされることが描かれています。

 

それは、全てのものが、死ななくなるということです。

 

そうなると、自然の流れが止まってしまい、不具合が出てきてしまいます。

 

そのことを知ったポールは、黒グルミを探し回り、死神を元に戻します。

 

しかし、ポールはお母さんが死神に連れて行かれることを思うと、胸が張り裂けそうになります。

 

しかし、ポールの思いが通じたのか、死神のはからいによって、お母さんは一時的に救われます。

 

その後、ポールは長いときをお母さんと幸せに過ごします。

 

その過程で、死があってこそ、生があることを改めて学んだのでしょう。

 

最後に、ポールは穏やかな気持ちで、お母さんを送り出します。

 

この絵本の中心にあるのは、生と死の関係です。

 

生と死は、関係のないもの同士ではなく、どちらもあるからこそ、成り立つ関係なのです。

 

命の尊さや死の必要性が、すんなりと入ってくる、不思議な絵本です。

 

大人が読んでも、学ぶことの多い一冊です。

 

印象的なことば

 

ポールは、おだやかな気もちで、かあさんをおくりだしました。

なぜって、「死」があってこそ、「生」はあるのですから。

ポールには、とっくにそのことがわかっていました。

 

 

ポールは、死があるから生もあることを、死神との出会いによって知ります。

 

そのおかげで、お母さんを穏やかに送り出すことができました。

 

感想

 

死神から、お母さんを助けようとする少年の物語です。

 

雰囲気のあるイラストや、風変わりな物語の世界に、どんどん引き込まれました。

 

この絵本を読んで、改めて生と死は共存しているのだと感じました。

 

生と死について、考えさせられる一冊です。

 

大人がじっくり読むのにオススメです。

 

 

黒グルミのからのなかに

黒グルミのからのなかに

 

 

 

 

 

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