『アンジェロ』を読みました。
- 作者: デビッドマコーレイ,David Macaulay,千葉茂樹
- 出版社/メーカー: ほるぷ出版
- 発売日: 2006/05/01
- メディア: 大型本
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あらすじ
アンジェロは、壁塗り職人です。
ある日、古い教会で仕事をしていると、息も絶え絶えのハトを見つけます。
アンジェロは、文句を言いながらも、ハトの手当に打ち込むようになります。
やがて、ハトは元気になり、飛び立って行きますが……。
アンジェロとハトのシルビアが織りなす、心温まる物語です。
見どころ
今回の見どころは、仕事への情熱と動物への思いやりです。
アンジェロは、壁塗り職人です。
ある日、仕事をしていると、息も絶え絶えのハトを見つけます。
アンジェロは、ハトをほうきの柄でつつきますが、ハトは動きません。
アンジェロは、仕方なくそのままにして、仕事を続けます。
仕事を終えたアンジェロは、ハトを帽子に入れて家に向かいます。
途中でハトを捨てていくつもりでしたが、町中が物騒で、家に着いたときも、ハトは帽子の中にいます。
アンジェロは、ハトをテラスにおこうとしますが、近くのねこに気付き、慌ててハトを部屋に入れます。
結局、ブツブツ言いながらも、アンジェロはハトのベッドを作ってやります。
いつの間にかアンジェロは、時間を惜しまずに、ハトの手当に打ち込むようになります。
アンジェロは、ハトが元気になると、仕事場に連れて行くようになります。
また、休みの日には、きれいな空気を吸わせてやろうと、ハトと車で田舎にドライブをします。
そして、ハトはすっかり元気になります。
ある日の朝、アンジェロが教会に出かけたあと、ハトはどこかに飛び立ちます。
アンジェロのハトは、広場で大道芸をして、人気者になり始めます。
ハトは、時々アンジェロを見に行きます。
そして、何ヶ月かが経ち、アンジェロの仕事ぶりが遅くなっていることに気付きます。
ある日の午後、ハトはアンジェロにあいさつに行きます。
アンジェロは、ハトに本音を漏らします。
その日ハトは、最後までそばにいて、アンジェロを励まします。
その日から、ハトは毎日やってきて、アンジェロをサポートします。
アンジェロは、自分の見事な仕事ぶりを自慢します。
昼休みには、仲間のハトたちもやってきて、ショーをして見せます。
しかし、ハトに助けてもらっても、どんどん時間が足りなくなり、昼休みにも働き続けるようになります。
ある土曜日のこと、ドライブの途中で、アンジェロはハトにようやく名前をつけてやります。
ハトの名前は、シルビアになります。
月日は流れても、アンジェロとシルビアは、いつも一緒にいます。
冬がやってきて、アンジェロは寒すぎて、スタッコをこねることができない日もあります。
2年以上にもわたるつらい仕事の末、ようやく終わりが見えてきます。
しかし、冬が間近に迫り、アンジェロの動きはますます遅くなります。
冬がくる前に仕事を終えようと、アンジェロは大好きな週末のドライブも取りやめにします。
11月のある暖かい日、アンジェロはついに仕事を仕上げます。
それは、教会正面中央の天使の像でした。
しかし、アンジェロは喜ぶどころか、とても不安そうです。
シルビアは、夕食のときになんとか元気付けようとしますが、アンジェロはぼんやりと皿を見つめるばかり。
そして、とうとうアンジェロが口を開きます。
アンジェロは、自分がいなくなったら、シルビアがどこに行くのか心配だと言います。
その後、アンジェロは突然叫び、出かけていきます。
アンジェロが家に戻ってきたとき、ちょうど朝日が昇ります。
疲れ切った様子のアンジェロですが、口元には何ヶ月ぶりかの微笑みがあります。
その日の午後、作業員たちが、教会の足場を取り外します。
しかし、その日アンジェロは、姿を見せませんでした。
誰もが、何かよくないことが起こったに違いないと思います。
そして、アンジェロは、ベッドの上で発見されます。
周りには、木の枝と鳥の羽が落ちています。
アンジェロが運び込まれた教会には、新しい部分が一カ所あります。
なんと、天使たちの足元に、見事な鳥の巣ができていたのです。
それは、新しいシルビアの家でした。
それから長い年月が過ぎ、教会が再び修復されることになります。
若い壁塗り職人がふたり、アンジェロの作った巣のもとにやってきます。
巣は見事なままで、巣の底には羽と麦わらが残っています。
どちらの職人も、手を触れることはありませんでした。
この絵本では、アンジェロの仕事に対する情熱と動物への思いやりが描かれています。
アンジェロは、亡くなるまで、誇りと責任感を持って、仕事をやり遂げました。
段々と体力が衰え、仕事のペースも遅くなりますが、アンジェロは決して仕事を投げ出したりしません。
そこには、壁塗り職人の仕事に対する情熱が溢れています。
また、仕事の最中に出会ったハトのシルビアには、文句を言いながらも手当をしたり、動物に対して優しく接しています。
最後には、仕事や自分のことよりも、シルビアのこれから先のことを心配して、シルビアに新しい家を作ってやります。
その後、アンジェロは、静かに息を引き取ります。
アンジェロの素晴らしい人柄が描かれた、感動の絵本です。
印象的なことば
いまではここがおまえの家だ。だがな、人間はいつまでも生きることはできんのだ。おれがいなくなったら、おまえはいったい、どこにいくんだい?おまえのことが心配だよ
アンジェロの言葉です。
アンジェロは、ハトのシルビアの今後のことを心配しています。
もう、自分が長くないことを知っているからです。
そして、実際にシルビアのために、新しい家を作ってやります。
アンジェロが、心からシルビアのことを思っていることが、伝わってくる言葉です。
感想
アンジェロとハトのシルビアの交流が描かれた、心温まる一冊です。
アンジェロの仕事への情熱や、ハトへの思いやりは、素晴らしいものです。
アンジェロのような行動は、心掛けたくても、なかなかできるものではありません。
だからこそ、アンジェロの人生は、こんなにも読者を感動させるのだと思います。
アンジェロは、いつも見返りを求めずに、相手に与えることを考えていたのでしょう。
ここまでの境地に至るのは、なかなか至難の業ですが、少しでも見習いたいものです。
特に大人に読んでほしい一冊です。
- 作者: デビッドマコーレイ,David Macaulay,千葉茂樹
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