ハルばあちゃんの手
『ハルばあちゃんの手』を読みました。
2017年最後の一冊です。
あらすじ
ハルは、海辺の小さな村に生まれます。
ハルの手を見て、みんなが「器用だし、幸せになる」と言います。
小学生になったハルは、折り紙やお手玉など、手を使うことなら誰にも負けません。
みんなが、ハルの手を羨ましがります。
あるとき、ハルがかずらのつるでかごを編んでいると……。
ハルの人生が感動的に描かれた物語です。
見どころ
今回の見どころは、ハルの手と人生です。
ハルは、海辺の小さな村に生まれます。
ハルの手を見て、みんなが褒めます。
ハルは小学生になり、折り紙やお手玉など、手を使うことなら誰にも負けないようになります。
あるとき、ハルがかずらのつるでかごを編んでいると、男の子が覗いていて、「妹の土産にしたいから、そのかごをくれないか」と頼んできます。
ハルはかごに、たんぽぽやレンゲの花を入れてあげます。
男の子は、ハルの手を見て、「ほくろの目印もあるから、忘れない」と言います。
ハルも恥ずかしそうに、「わたしも、忘れない」と言います。
ハルが15歳になると、戦争でお父さんが亡くなり、お母さんも病気で亡くなります。
ハルは、残された家族の面倒を見ることになります。
魚獲りの仕事をしたり、魚の干物を売ったりして、一生懸命お金を稼ぎます。
海に出られない冬は、わら草履を編み、針仕事もします。
そんなハルのただひとつの楽しみは、年に一度の盆踊りです。
ハルの美しい顔や手振りが、みんなの目を引きます。
そして、盆踊りの最後の夜、ひとりの若者が、ハルの手を取ります。
その若者は、子どもの頃に花かごを作ってあげたユウキチでした。
次の日、ユウキチがハルを訪ねてきて、「自分の店を出すまで待っていてほしい」とプロポーズをします。
ハルは、頷いてプロポーズを受けます。
それから何年か経ちますが、ユウキチからの便りはありません。
そして、ある日突然ユウキチが現れ、ハルはユウキチのところへお嫁にいきます。
ハルは器用な手で、ユウキチのケーキ作りを手伝い、店は繁盛します。
その間に、ハルはふたりの男の子も育てます。
やがて、ふたりの子どもが独立します。
店のお客も少なくなりますが、ハルはユウキチとケーキを作っているときが幸せで、寂しいとも思いません。
ユウキチが病気でなくなり、ハルはひとりで村へ戻ります。
村には、昔の面影はなくなっています。
盆踊りが始まると、ハルも出かけて行って、踊ります。
そして、ハルは昔の踊り場へ行き、踊ります。
この絵本では、ハルの手を中心に、ハルの人生が描かれています。
ハルは小さい頃から手が器用で、大きくなってからも手の器用さで、人生を切り開いていきます。
ハルの人生は、早くに両親を亡くし、決して平坦な道ではありませんが、それでもハルは幸せそうです。
それは、やはりユウキチの存在が大きいと思います。
そんなユウキチと出会ったきっかけも、ハルの器用な手でした。
この絵本は、ある女性の人生の物語でもあり、運命の人と結婚し、添い遂げる姿を描いたラブストーリーでもあります。
そして、その中心には、いつも手があります。
人の手の持つ力強さや生命力、または創造力や美しさに心揺さぶられます。
タイトルの通り、ハルの手が見どころの絵本です。
印象的なことば
ユウキチさん、わたしは あんたの おかげで ずっと しあわせだったよ
おばあちゃんになった、ハルの言葉です。
最後のページで、月の光の下で踊りながら、微笑みを浮かべてこう言います。
亡くなった旦那さんに対する感謝の気持ちが素晴らしいです。
また、決して平坦な道ではなかったのに、年を重ねてこう言えるのは、本当に幸せな証拠だなと思います。
感想
ハルばあちゃんの人生が描かれた絵本です。
静かな雰囲気の中にも、ハルの力強く生きる姿が描かれています。
まるで、写真を見ているような感覚です。
人を惹きつける魅力がある、不思議な絵本です。
今まで読んだことのないタイプの絵本で、感動的な作品でした。
ぜひ一度は読んでほしい、おすすめの絵本です。
今年も、「死ぬまでに読みたい絵本」を読んでくださってありがとうございました。
来年も、宜しくお願いします。