おまえうまそうだな
『おまえうまそうだな』を読みました。
あらすじ
大昔のある晴れた日に、山が噴火して地震が起こります。
その時、アンキロサウルスの赤ちゃんが生まれます。
しかし、赤ちゃんは広い土地にひとりぼっちです。
赤ちゃんが寂しくて、泣きながら歩いていると……。
アンキロサウルスの赤ちゃんとティラノサウルスのお父さんの心温まる1冊です。
見どころ
今回の見どころは、子どもを思う気持ちです。
アンキロサウルスの赤ちゃんがひとりで歩いているところに、ティラノサウルスがやってきます。
ティラノサウルスは、アンキロサウルスの赤ちゃんを狙い、飛びかかろうとします。
ところが、その時アンキロサウルスはティラノサウルスにしがみつきます。
どうやら、アンキロサウルスはティラノサウルスのことをお父さんだと思ったようです。
そして、アンキロサウルスは自分の名前を、「ウマソウ」だと思い込みます。
そこに、キランタイサウルスが近づき、ウマソウに突然飛びかかろうとしますが、ティラノサウルスはウマソウを守ります。
それから、ふたりは一緒に過ごすようになります。
ティラノサウルスはウマソウに、体当たりやしっぽの使い方など、様々なことを教えます。
しかし、ふたりは本当の親子ではありません。
そのため、ふたりにもお別れの時がやってきます。
ある日、ティラノサウルスがウマソウにお別れを告げると、ウマソウは泣きながら嫌がります。
そこで、ティラノサウルスはウマソウに、競争に勝ったらずっと一緒にいると言います。
ウマソウは、全速力で走ります。
すると、ウマソウはある恐竜たちに出会います……。
その恐竜たちは、アンキロサウルスたち、つまりウマソウの両親のようです。
ティラノサウルスは、「さよなら ウマソウ……」とつぶやきながら、赤い実をひとつ食べ、その場を離れます。
ティラノサウルスは、最初はウマソウにお父さんと呼ばれ、戸惑いますが、次第に父性が芽生え、ウマソウを本当の子どものように感じ始めます。
ティラノサウルスにとって、ウマソウは本当の子どもではありませんが、それでも子どもを思う気持ちは変わりません。
ティラノサウルスも、本当はウマソウとずっと一緒にいたかったはずです。
そのくらいウマソウのことが好きだったはずですが、同時にティラノサウルスは大人なので、ウマソウとずっと一緒にいるべきでないことがわかっています。
そのため、最後の方でウマソウが実の両親に会う場面では、ティラノサウルスは静かに身を引いています。
本当の子どものように可愛がっていたウマソウの幸せを願っての、大人の行動だと思います。
ティラノサウルスの父性が、感動的に描かれた絵本です。
印象的なことば
さよなら ウマソウ……
ラストの、ティラノサウルスの言葉です。
ティラノサウルスの気持ちを考えると、なんとも切ないのですが、お父さんらしく優しくウマソウを送り出す言葉でもあります。
感想
父が子を思う気持ちが痛いほど伝わってくる、感動的な絵本です。
怪獣たちの表情がユーモラスで、面白く読めるのですが、最後は大人こそ涙してしまうほどに感動的なラストです。
ウマソウこと、アンキロサウルスの赤ちゃんが、とても可愛くて、同時に健気で、涙をそそります。
お子さんがいらっしゃる方も、そうでない方も、ティラノサウルスに十分感情移入できると思います。
子どもも十分楽しく読める絵本ですが、大人にこそ読んでほしい1冊です。