はっぴぃさん
『はっぴぃさん』を読みました。
あらすじ
はっぴぃさんは、山の上の大きな石の上に時々やって来て、困ったことや願い事を聞いてくれます。
そんなはっぴぃさんに会いに、ぼくとわたしは山の上の大きな石を目指します。
そして、ぼくとわたしは大きな石にたどり着き、はっぴぃさんを待ちますが……。
読み進めるうちに心が満たされていく、そんな絵本です。
見どころ
今回の見どころは、発想の転換です。
ぼくとわたしのふたりは、それぞれはっぴぃさんに願い事を聞いてもらうために、山の上を目指します。
ふたりは、なんとか目的地まで辿り着きますが、はっぴぃさんは一向に現れません。
ぼくとわたしは一緒に座り、話します。
ふたりは、お互いの願い事を尋ね合います。
ぼくは、どうしたら「のろのろ」じゃなくなるのか聞きたかったようです。
一方で、わたしは、どうしたら慌てなくなるのか聞きたかったようです。
そこで、わたしがぼくにこう言います。
「きっと のろのろは なんでも ていねいだからだと おもうわ」
ぼくは、わたしにこう言います。
「あわてるのは なんでも いっしょうけんめいだからだと おもうよ」
ふたりは、一緒に笑い合います。
その後、結局はっぴぃさんは現れませんでしたが、太陽を見ているうちに、ふたりははっぴぃさんに会えたような、充実感を味わいます。
そして、ふたりは太陽に向かって、たくさん願い事をして、日が沈まないうちに帰っていきます。
ふたりは、はっぴぃさんには会えませんでしたが、帰る頃にはお互いに収穫を得て、心が満たされた状態になりました。
ふたりが、そのような気持ちになれたのはなぜでしょうか。
その理由は、発想の転換にあります。
ふたりは話をするうちに、大事なことに気がつきます。
ぼくが悩んでいたのろのろは、実はなんでも丁寧に取り組んでいるということだったのです。
また、わたしが悩んでいた慌てるクセは、実はなんでも一生懸命だからだということだったのです。
このことに気がつけたのは、お互いの発想の転換があったからです。
発想の転換次第では、短所は十分長所になり得るのです。
このことに気がついたふたりは、はっぴぃさんには会えずじまいでも、心が満たされ、すっかり悩みが消えたことでしょう。
発想の転換を行えば、自分の心を満たし、幸せになることが可能です。
それには、日頃から物事をいつもとは異なる視点で見ることが大切です。
また、自分だけでは気づかないことでも、家族や友人などと話すだけで、何か違う視点が得られることもあります。
何かに行き詰まったら、ふたりのように発想の転換を活用したいものですね。
印象的なことば
きっと のろのろは なんでも ていねいだからだと おもうわ
わたしがぼくに言った言葉です。
それに対して、ぼくがわたしに言った言葉も素敵です。
こんな言葉が言える人になりたいものです。
感想
荒井良二さんの絵本です。
荒井さんの絵本は、イラストと文章がどちらもあたたかくて、優しい気持ちになれます。
この絵本も、読んだ後にじんわりと心があたたまります。
子供も十分読める内容だと思いますが、むしろある程度の年齢や大人になってからの方が、心に刺さる内容なのではないかと思います。
特に、何かに悩んでいる方に、おすすめしたい1冊です。
折に触れて読み返したい絵本です。