死ぬまでに読みたい絵本

「日常に絵本を」をテーマに、大人も楽しめる絵本をご紹介するブログです。

ねこのせんちょう

『ねこのせんちょう』を読みました。

 

ねこのせんちょう

ねこのせんちょう

 

 

あらすじ

 

ねこのせんちょうの家は、川の側に立っています。

 

せんちょうは昼寝が大好きで、人間のベッドや階段のてっぺんでも寝ます。

 

せんちょうは、眠っていないときは、体の手入れをしたり、エサを食べたりします。

 

そして、月明かりの晩に、せんちょうは出かけていき……。

 

せんちょうの暮らしが描かれた絵本です。

 

見どころ

 

今回の見どころは、ねこのせんちょうの日常です。

 

ねこのせんちょうの家は、川の側に立っています。

 

せんちょうは昼寝が大好きで、ベッドや階段のてっぺんなど、様々な場所で寝ます。

 

また、せんちょうは眠っていないときは、体の手入れをします。

 

手足をぺろぺろ舐め、しっぽの先まできれいにします。

 

そして、せんちょうは眠ったり、舐めたりしていないとき、食べています。

 

せんちょうのための青い皿で、魚を食べることもあります。

 

さらに、眠ったり、舐めたり、食べたりしていないとき、せんちょうは外に出かけます。

 

月明かりの晩に、せんちょうは川のほとりまで歩き、ボートに飛び乗り、オールを漕いで恋人の家を目指します。

 

星空の下で、ふたりは仲睦まじく過ごします。

 

夜が明ける前に、ふたりはわかれ、せんちょうは家路につきます。

 

そして、せんちょうはベッドに飛び乗り、のどをごろごろ鳴らします。

 

この絵本では、ねこのせんちょうの日常が描かれています。

 

ねこらしい生活が描かれるとともに、まるで人間のような一面もあります。

 

せんちょうは、なんとボートに乗り、オールを漕いで、恋人の家に遊びに行きます。

 

ふたりが星空の下で過ごす場面は、なんともロマンチックです。

 

ねこのせんちょうが可愛らしくて、思わず微笑んでしまう絵本です。

 

印象的なことば

 

ほしぞらの した、ふたりは なかむつまじく すごす。

てと てを かさねて。

 

 

せんちょうと恋人のねこが、ボートにふたりきりでいる場面です。

 

星空の下、ふたりだけの時間を過ごすカップルは、幸せそうな顔をしています。

 

感想

 

ねこのせんちょうの生活が描かれた絵本です。

 

ねこのせんちょうが可愛くて、ねこ好きの方は必見の一冊です。

 

作者のマドレーヌ・フロイドは、実際に川の側の家で、夫とねこの「せんちょう」(英語だとキャプテン)と暮らしているそうです。

 

作者が実際にねこを飼っているからこそ、ねこの日常が細部まで丁寧に描かれているのですね。

 

その視点は、愛情に溢れている感じがします。

 

私は、特にせんちょうが、ボートに乗って恋人へ会いに行き、星空の下でふたりが一緒に過ごす場面が好きです。

 

また、せんちょうというネーミングのセンスもすごくいいと思います。

 

違う名前だったら、インパクトが薄まってしまいそうです。

 

特にねこ好きの方におすすめの一冊です。

 

 

ねこのせんちょう

ねこのせんちょう

 

 

 

 

 

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村 にほんブログ村 本ブログ 絵本・児童書へ
にほんブログ村

ゼロ年代+の絵本【2005年】

あけましておめでとうございます。

 

今年もよろしくお願いします。

 

今回は、ゼロ年代+の絵本の第6回目「2005年版」です。

 

ゼロ年代+の絵本の企画概要などは、こちらです。

 

ehon0016.hatenablog.com

 

 

それでは、2005年版スタートです。

 

 

 

①9月のバラ

 

ehon0016.hatenablog.com

 

9.11のときに、ユニオン広場で作者が実際に聞いた話をもとにして作られた絵本です。コンパクトなサイズの絵本で、多くの人に読んでもらいたい作品です。

 

 

②おじいちゃんがおばけになったわけ

 

 

ehon0016.hatenablog.com

 

エリックとおばけになったおじいちゃんの心温まる一冊です。孫とおじいちゃんの仲の良さが伝わってくる、素敵な絵本です。

 

③終わらない夜

 

 

ehon0016.hatenablog.com

 

終わらない夜の旅が描かれた不思議な絵本です。不思議な夜の世界を冒険できる、魅力的な一冊です。

 

④カクレンボ・ジャクソン

 

ehon0016.hatenablog.com

 

恥ずかしがり屋のカクレンボ・ジャクソンが才能を発揮します。自分らしくいることの素晴らしさがわかる一冊です。

 

⑤くものすおやぶんとりものちょう

 

 

ehon0016.hatenablog.com

 

くものすおやぶんが街の平和のために大活躍する絵本です。おやぶんのかっこいい姿が描かれた、必見の一冊です。

 

⑥綱渡りの男

 

 

ehon0016.hatenablog.com

 

ニューヨークのツイン・タワーで、実際に綱渡りをした大道芸人の物語です。フランス出身の大道芸人フィリップ・プティの素晴らしい大道芸が見られます。

 

⑦どんなかんじかなぁ

 

 

ehon0016.hatenablog.com

 

ひろくんが友達の立場になって考えを巡らせ、様々なことに気付くお話です。大事なことに気付かされる、そんな絵本です。

 

⑧ハルばあちゃんの手

 

 

ehon0016.hatenablog.com

 

ハルばあちゃんの人生が感動的に描かれた物語です。人の手の持つ力強さや生命力、または創造力や美しさに心揺さぶられます。

 

⑨ぼうし

 

 

ehon0016.hatenablog.com

 

動物たちが繰り広げる、ぼうしにまつわる楽しい絵本です。冬に家族で読みたい一冊です。

 

⑩ポテト・スープが大好きな猫

 

 

ehon0016.hatenablog.com

 

おじいさんと猫の心温まるストーリーです。訳は、村上春樹さんです。猫好きな人には、特にオススメです。

 

 

 

ベスト作品発表

 

2005年も、名作揃いですね。

 

今回も、海外絵本と国内絵本のそれぞれで、ベスト作品を決めたいと思います。

 

海外絵本では、『ポテト・スープが大好きな猫』がベスト1です。

 

書店でひとめぼれした絵本で、内容も期待を裏切らないものになっています。

 

村上春樹さんの訳もいいです。

 

猫好きの人も、そうでない人もオススメの一冊です。

 

また、国内絵本では『ハルばあちゃんの手』がベスト1です。

 

ストーリーも絵も完璧な絵本でした。

 

読後は、良質な日本映画を観たような感覚になります。

 

感動の名作です。

 

また、子どもに読んでほしいナンバー1は、『どんなかんじかなぁ』です。

 

他人の立場になって考えることの重要性が感じられる絵本です。

 

子どもだけではなく、大人にも読んでほしい一冊です。

 

2005年の傾向

 

2005年は、バラエティー豊かで、内容も様々なものがありました。

 

その中でも、9.11に関する作品が、ふたつ登場しました。

 

『9月のバラ』と『綱渡りの男』です。

 

『綱渡りの男』は、直接的に9.11を描いた作品ではありませんが、絵本の中でツイン・タワーが出てきます。

 

『9月のバラ』は、作者のジャネット・ウィンターが実際に聞いた話をもとにつくられた絵本です。

 

どちらも、後世に残したい絵本です。

 

国内絵本では、子どもだけではなく、大人にも楽しめる絵本が増えているような印象を受けました。

 

『ハルばあちゃんの手』は、むしろ大人に読んでほしい感動の絵本です。

 

以上が、ゼロ年代+の絵本の2005年版でした。

 

気になった絵本がありましたら、ぜひ読んでみてください。

 

あなたの心の一冊が見つかれば幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村 にほんブログ村 本ブログ 絵本・児童書へ
にほんブログ村

ハルばあちゃんの手

『ハルばあちゃんの手』を読みました。

 

2017年最後の一冊です。

 

ハルばあちゃんの手 (日本傑作絵本シリーズ)

ハルばあちゃんの手 (日本傑作絵本シリーズ)

 

 

あらすじ

 

ハルは、海辺の小さな村に生まれます。

 

ハルの手を見て、みんなが「器用だし、幸せになる」と言います。

 

小学生になったハルは、折り紙やお手玉など、手を使うことなら誰にも負けません。

 

みんなが、ハルの手を羨ましがります。

 

あるとき、ハルがかずらのつるでかごを編んでいると……。

 

ハルの人生が感動的に描かれた物語です。

 

見どころ

 

今回の見どころは、ハルの手と人生です。

 

ハルは、海辺の小さな村に生まれます。

 

ハルの手を見て、みんなが褒めます。

 

ハルは小学生になり、折り紙やお手玉など、手を使うことなら誰にも負けないようになります。

 

あるとき、ハルがかずらのつるでかごを編んでいると、男の子が覗いていて、「妹の土産にしたいから、そのかごをくれないか」と頼んできます。

 

ハルはかごに、たんぽぽやレンゲの花を入れてあげます。

 

男の子は、ハルの手を見て、「ほくろの目印もあるから、忘れない」と言います。

 

ハルも恥ずかしそうに、「わたしも、忘れない」と言います。

 

ハルが15歳になると、戦争でお父さんが亡くなり、お母さんも病気で亡くなります。

 

ハルは、残された家族の面倒を見ることになります。

 

魚獲りの仕事をしたり、魚の干物を売ったりして、一生懸命お金を稼ぎます。

 

海に出られない冬は、わら草履を編み、針仕事もします。

 

そんなハルのただひとつの楽しみは、年に一度の盆踊りです。

 

ハルの美しい顔や手振りが、みんなの目を引きます。

 

そして、盆踊りの最後の夜、ひとりの若者が、ハルの手を取ります。

 

その若者は、子どもの頃に花かごを作ってあげたユウキチでした。

 

次の日、ユウキチがハルを訪ねてきて、「自分の店を出すまで待っていてほしい」とプロポーズをします。

 

ハルは、頷いてプロポーズを受けます。

 

それから何年か経ちますが、ユウキチからの便りはありません。

 

そして、ある日突然ユウキチが現れ、ハルはユウキチのところへお嫁にいきます。

 

ハルは器用な手で、ユウキチのケーキ作りを手伝い、店は繁盛します。

 

その間に、ハルはふたりの男の子も育てます。

 

やがて、ふたりの子どもが独立します。

 

店のお客も少なくなりますが、ハルはユウキチとケーキを作っているときが幸せで、寂しいとも思いません。

 

ユウキチが病気でなくなり、ハルはひとりで村へ戻ります。

 

村には、昔の面影はなくなっています。

 

盆踊りが始まると、ハルも出かけて行って、踊ります。

 

そして、ハルは昔の踊り場へ行き、踊ります。

 

この絵本では、ハルの手を中心に、ハルの人生が描かれています。

 

ハルは小さい頃から手が器用で、大きくなってからも手の器用さで、人生を切り開いていきます。

 

ハルの人生は、早くに両親を亡くし、決して平坦な道ではありませんが、それでもハルは幸せそうです。

 

それは、やはりユウキチの存在が大きいと思います。

 

そんなユウキチと出会ったきっかけも、ハルの器用な手でした。

 

この絵本は、ある女性の人生の物語でもあり、運命の人と結婚し、添い遂げる姿を描いたラブストーリーでもあります。

 

そして、その中心には、いつも手があります。

 

人の手の持つ力強さや生命力、または創造力や美しさに心揺さぶられます。

 

タイトルの通り、ハルの手が見どころの絵本です。

 

印象的なことば

 

ユウキチさん、わたしは あんたの おかげで ずっと しあわせだったよ

 

おばあちゃんになった、ハルの言葉です。

 

最後のページで、月の光の下で踊りながら、微笑みを浮かべてこう言います。

 

亡くなった旦那さんに対する感謝の気持ちが素晴らしいです。

 

また、決して平坦な道ではなかったのに、年を重ねてこう言えるのは、本当に幸せな証拠だなと思います。

 

感想

 

ハルばあちゃんの人生が描かれた絵本です。

 

静かな雰囲気の中にも、ハルの力強く生きる姿が描かれています。

 

まるで、写真を見ているような感覚です。

 

人を惹きつける魅力がある、不思議な絵本です。

 

今まで読んだことのないタイプの絵本で、感動的な作品でした。

 

ぜひ一度は読んでほしい、おすすめの絵本です。

 

 

ハルばあちゃんの手 (日本傑作絵本シリーズ)

ハルばあちゃんの手 (日本傑作絵本シリーズ)

 

 

 今年も、「死ぬまでに読みたい絵本」を読んでくださってありがとうございました。

 

来年も、宜しくお願いします。

 

 

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村 にほんブログ村 本ブログ 絵本・児童書へ
にほんブログ村

9月のバラ

『9月のバラ』を読みました。

 

9月のバラ (世界子ども平和図書館)

9月のバラ (世界子ども平和図書館)

 

 

あらすじ

 

2001年9月11日に同時多発テロが起こりました。

 

この絵本の作者、ジャネット・ウィンターは、ユニオン広場へ行きます。

 

そして、ある若い男性から、バラの花を持ってアフリカからやってきたふたりの女性のことを聞いて……。

 

実際に起きたできごとを物語にした、感動の絵本です。

 

見どころ

 

今回の見どころは、悲しみを癒すたくさんのバラの花です。

 

2001年9月11日に同時多発テロが起こりました。

 

数日後、この絵本の作者、ジャネット・ウィンターは、ユニオン広場へ行きます。

 

そこには、たくさんのバラの花があります。

 

彼女がバラを見ていると、若い男の人がそばにきて、バラがどこからきたのかを教えてくれます。

 

そのバラがここまでくるには、こんなストーリーがありました。

 

南アフリカで、ある姉妹が住んでいて、バラを作っていました。

 

温室は、色とりどりのバラの花で溢れていました。

 

ニューヨークのフラワーショーにバラを出すために、ふたりは毎晩バラの飾り付けのデザインを考えました。

 

デザインを仕上げ、2400本のバラをふたりは丁寧に箱に詰めます。

 

そして、ふたりはニューヨークへ出発しました。

 

しかし、同時多発テロが起こり、飛行機は着陸します。

 

ふたりは、飛行場でバラの花を抱えて、待つことになりました。

 

さらに、一晩中行くところはどこにもありません。

 

そんなとき、ある男性が、「よければわたしの家にいらっしゃいませんか?」と、ふたりに提案します。

 

その男性は、フラッシングのファースト・ユナイテッド・メソジスト教会の人でした。

 

彼は、困っている人に宿を提供しようと、空港にやってきたのでした。

 

ふたりは、彼の申し出を受け入れ、お礼に使い道のなくなってしまったバラの花を贈ります。

 

それに対して、彼は「バラの花が使えるところならありますよ」と言います。

 

そして、男性はふたりを車に乗せ、ユニオン広場へ行きます。

 

ユニオン広場に着くと、ふたりはすぐに、芝生の上の空いた場所にバラを並べます。

 

芝生は、たちまちバラの花で埋まっていきます。

 

そして、バラの花でできたツインタワーができあがります。

 

その話を聞いたジャネットは、涙がバラの上に溢れます。

 

この絵本では、9.11のときにユニオン広場で実際に起きたできごとが描かれています。

 

ユニオン広場には、ふたりの女性のおかげで、たくさんのバラが置かれます。

 

そのバラが、そこに置かれるまでのストーリーが、この絵本では描かれています。

 

偶然のできごとが、たくさんの人々の悲しみを癒したのだと思います。

 

色とりどりのバラが印象的な作品です。

 

印象的なことば

 

わたしのなみだが バラの上にこぼれました。

 

作者のジャネット・ウィンターの言葉です。

 

感動的な実話に、思わず涙がでてしまいます。

 

感想

 

9.11のときに、ユニオン広場で作者が実際に聞いた話をもとにして作られた絵本です。

 

これまで紹介した絵本の中で、恐らく1番小さなサイズの絵本だと思います。

 

コンパクトで、可愛らしいイラストの表紙です。

 

9.11のときのことが描かれた佳作です。

 

ジャネット・ウィンターの絵本が好きなので、読んでよかったです。

 

多くの人に読んでもらいたい作品です。

 

 

9月のバラ (世界子ども平和図書館)

9月のバラ (世界子ども平和図書館)

 

 

 

 

 

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村 にほんブログ村 本ブログ 絵本・児童書へ
にほんブログ村

パセリともみの木

『パセリともみの木』を読みました。

 

パセリともみの木

パセリともみの木

 

 

あらすじ

 

深い緑の森の外れに、1本の古いもみの木がありました。

 

もみの木は、切り立った崖を見下ろすように立っていました。

 

その昔、もみの木は、黄緑の柔らかな腕をいっぱいに広げながら育ちました。

 

しかし、やがてもみの木は、厳しい環境に適応するために、崖の淵を這うように大きくなっていきました。

 

ますます大きくなったもみの木に、やがてシカが住み着いて……。

 

シカともみの木がお互いを大事にしながら暮らす姿が描かれた絵本です。

 

見どころ

 

今回の見どころは、動物と植物の共生です。

 

深い森の外れに、1本の古いもみの木がありました。

 

もみの木は、切り立った崖を見下ろすように立っていました。

 

その昔、もみの木は、黄緑の柔らかな腕をいっぱいに広げながら、育ちました。

 

しかし、もみの木は、やがて気が付きます。

 

崖から吹き付ける風や雪のため、ここで生きていくのなら、厳しい自然と闘わなければならないのです。

 

もみの若木は、岩にしっかりとしがみつき、奥へと根を張りながら、ゆっくり大きくなりました。

 

一方で、森の木々は、まっすぐに伸びていきます。

 

やがて、まっすぐな木は、人間に切り倒されました。

 

何代にも渡って、それが繰り返されていくのを、もみの木はずっと見守っていました。

 

人間は、ふもとの村へ切った木を運び、板にしました。

 

そして、家具やおもちゃ、馬車や船などを作りました。

 

切られても、切られても、まっすぐな木は、すぐにまた伸びていきました。

 

一方、崖に立つねじ曲がったもみの木を欲しがる人は、いませんでした。

 

もみの木は、さらに大きくなり、みどりのテントのようになりました。

 

やがて、そこにシカが住み着きました。

 

シカはそこで子どもを育て、シカともみの木は互いに助け合い、仲良く歳をとっていきました。

 

シカは、パセリが大好きで、毎日たくさん食べていました。

 

そのおかげで、シカは歳を取っても、たいへん元気でした。

 

老いたシカは、孫たちや他の動物にも、パセリを食べるように言いました。

 

そして、いつかシカは、パセリと呼ばれるようになりました。

 

もみの木が年老いて、その下で暮らすことができなくなっても、パセリは毎日もみの木に会いにいきました。

 

そして、幹に体を寄せ、深い谷を見下ろしました。

 

もしも、猟師がやってきたら、すぐに森で遊ぶ孫たちに教えてやるためです。

 

そんな朝、ふもとの村では、猟師がよく見える双眼鏡で、シカを見つけてしまいました。

 

猟師は、そっと岩に登り、切り立った崖の上に辿り着きました。

 

何も知らないシカは、静かに草を食べています。

 

猟師は、もみの木に寄りかかり、鉄砲をまっすぐに構えました。

 

そして、引き金に指をかけた瞬間、もみの木は小さな声で、パセリに危険を知らせました。

 

突然強い風が吹き、もみの枝がねじれて跳ね返り、猟師の肩を打ちました。

 

よろけた拍子に、猟師は根に足を取られ、勢い良くひっくり返り、そのまま谷底に落ちていきました。

 

後には、双眼鏡がもみの枝に揺れていました。

 

猟師の肩から、もみの木が素早く抜き取ったのです。

 

パセリは、もみの木に何度もお礼を言いました。

 

それから、パセリは双眼鏡を覗いて、谷を見張りました。

 

おかげで、猟師たちは、動物たちに近づくことはできませんでした。

 

そうして、パセリともみの木は、仲間とともに、幸せに暮らしました。

 

この絵本では、自然の中で、動物と植物がともに暮らしていく姿が描かれています。

 

シカともみの木は、生きていくために、自然に適応しながら、協力して暮らしていきます。

 

絵本の中では、シカともみの木が、お互いに支え合いながら、友情を育み、ともに暮らしています

 

その姿は、人間が足を踏み入れることのできない、崇高なもののようです。

 

シカともみの木がともに暮らす様子は、感動的です。

 

自然を大切にしようと、心から思える一冊です。

 

印象的なことば

 

ありがとう ともよ、 ほんとうに ありがとう!

 

パセリの言葉です。

 

もみの木に命を助けてもらい、パセリがもみの木にこう言います。

 

ふたりの信頼関係や強い絆が、感じられます。

 

感想

 

シカともみの木がともに暮らす様子が描かれた絵本です。

 

この絵本の作者のベーメルマンスは、マドレーヌシリーズの作者としても有名な作家です。

 

 

マドレーヌのクリスマス

マドレーヌのクリスマス

 

 

 

私も小さな頃に、マドレーヌを見て育ったので、マドレーヌが大好きなのですが、ベーメルマンスの他の作品は、今回が初めてでした。

 

今回読んだこの絵本は、この作品単独でも素晴らしいものです。

 

マドレーヌシリーズを読んだことのある人も、ない人も、どちらにもオススメです。

 

クリスマスに読みたい一冊です。

 

 

パセリともみの木

パセリともみの木

 

 

 

 

 

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村 にほんブログ村 本ブログ 絵本・児童書へ
にほんブログ村

くものすおやぶんとりものちょう

『くものすおやぶんとりものちょう』を読みました。

 

 

くものすおやぶん とりものちょう (こどものとも傑作集)

くものすおやぶん とりものちょう (こどものとも傑作集)

 

 

あらすじ

 

虫の街は、春爛漫で賑わっています。

 

くものすおやぶんは、はえとりのぴょんきちを連れ、街の見回りをします。

 

明日は、虫の街で春祭りが開催されます。

 

お菓子屋さんのありがたやの前を通ると、店員がおやぶんのもとへ駆け寄ってきて……。

 

くものすおやぶんが街の平和のために大活躍する絵本です。

 

見どころ

 

今回の見どころは、くものすおやぶんの活躍です。

 

春爛漫の虫の街では、桜の花が咲き乱れ、街は賑わっています。

 

そんな中、くものすおやぶんは、はえとりのぴょんきちを連れ、街の見回りをしています。

 

明日は、虫の街で春祭りが行われます。

 

お菓子屋さんのありがたやの前を通りかかると、店員がおやぶんのもとへ駆け寄ってきます。

 

店員は、盗人から手紙が届いたので、助けて欲しいと言います。

 

店の奥の座敷で、おやぶんが盗人からの手紙を見てみると、それは盗みの予告状でした。

 

蔵の中には、春祭りのために用意されたお菓子がたくさん入っているため、それを盗みにくるようです。

 

そして、おやぶんはへそから糸を繰り出して、蔵にぐるぐるとくもの巣をはり、盗人が蔵に入れないようにします。

 

夜になると、おやぶんとぴょんきちは、庭の桜の木に登り、盗人を待ちます。

 

そこに、真っ白い雲のようなものがやってきて、蔵の扉に体当たりし、蔵の中へと入っていきます。

 

真っ白い雲は、盗人のかくればねだったのです。

 

おやぶんとぴょんきちが、蔵の中へ入ると、お菓子が宙を舞っています。

 

そして、お菓子を入れたまゆの袋が動き出すと、思わずぴょんきちが袋に飛びつきます。

 

ぴょんきちは、袋をつかみ大暴れします。

 

すると、まゆの袋は家の中に突っ込みます。

 

おやぶんが駆けつけると、かくればね三兄弟が逃げ出します。

 

おやぶんとぴょんきちは、それを追いかけます。

 

おやぶんが外に出ると、風もないのにやけに桜が散ることに気付きます。

 

そこで、おやぶんが桜の木に向かって糸を繰り出すと、見事にかくればね三兄弟を捕らえます。

 

三兄弟も、「参りました」と頭を下げます。

 

夜が明け、春祭りが開催されます。

 

おやぶんに引き連れられてやってきたかくればねたちは、お菓子を詰めたまゆを運んでお詫びの奉公をします。

 

その後、かくればねたちは、盗人から足を洗い、街の運送屋として働いています。

 

おやぶんは、一件落着とにっこり微笑みます。

 

この絵本では、くものすおやぶんとぴょんきちが、街の安全のために、活躍する姿が描かれています。

 

おやぶんは、明晰な頭脳と糸の技で、盗人を捕まえます。

 

そんなおやぶんは、街の頼れるヒーローです。

 

おやぶんのかっこいい姿が描かれている、子どもも大人も必見の一冊です。

 

印象的なことば

 

これで いっけんらくちゃくだ

 

くものすおやぶんの言葉です。

 

問題を解決したおやぶんは、にっこりと微笑みます。

 

感想

 

くものすおやぶんが大活躍する絵本です。

 

虫の街の風景が、細かく描かれていて、見ていて飽きません。

 

文章のリズムも良く、楽しんで読める絵本です。

 

くものすおやぶんもかっこいいのですが、子分のぴょんきちがすごく可愛いです。

 

ついつい、ぴょんきちを目で追ってしまいます。

 

また、お菓子がカラフルで、見た目も可愛くて、美味しそうです。

 

虫というと、苦手な方も多いと思いますし、実際私も苦手です。

 

しかし、この絵本は、そんな虫嫌いな方でも、楽しめる作品だと思います。

 

虫のキャラクターたちは可愛くて、風景も綺麗で、ストーリーも面白いので、誰もが楽しめる作品になっています。

 

大人が楽しむのもいいですし、子どもに読んであげるのもいいと思います。

 

家族で楽しめる一冊です。

 

 

くものすおやぶん とりものちょう (こどものとも傑作集)

くものすおやぶん とりものちょう (こどものとも傑作集)

 

 

 

 

 

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村 にほんブログ村 本ブログ 絵本・児童書へ
にほんブログ村

どんなかんじかなぁ

『どんなかんじかなぁ』を読みました。

 

どんなかんじかなあ

どんなかんじかなあ

 

 

あらすじ

 

友達のまりちゃんは、目が見えません。

 

ひろくんは、見えないってどんな感じかなと思い、考えを巡らせます。

 

ひろくんは、目をつぶってみることにします。

 

すると、色々な音が聞こえてきて……。

 

ひろくんが友達の立場になって考えを巡らせ、様々なことに気付くお話です。

 

見どころ

 

今回の見どころは、相手の身になって考えることです。

 

ひろくんの友達のまりちゃんは、目が見えません。

 

ひろくんは、目が見えないってどんな感じかなぁと思い、しばらく目をつぶってみます。

 

すると、色々な音が聞こえてきます。

 

ひろくんは、驚いて目を開けます。

 

そして、まりちゃんに会った時に、「見えないってすごいんだね」と、体験したことを語ります。

 

まりちゃんは笑って、「ひろくんって、変わってる」と言います。

 

もうひとりの友達、さのくんは、耳が聞こえません。

 

ひろくんは、聞こえないってどんな感じかなぁと思い、しばらく耳をふさいでみます。

 

すると、ひろくんは、お母さんの顔のほくろの数を初めて知ります。

 

そして、さのくんに会った時、「聞こえないってすごいんだね」と、体験したことを語ります。

 

さのくんは、「ひろくん、考えすぎー」とふきだします。

 

別の友達のきみちゃんは、お父さんもお母さんもいません。

 

ひろくんは、それがどんな感じかなぁと思い、一生懸命考えますが、わかりません。

 

そして、きみちゃんがきた時に、「きっと、すごく寂しいんだろうね」と聞いてみます。

 

きみちゃんは、ちょっと考えてから「そうでもないよ」と言います。

 

そして、次の日曜に、きみちゃんがひろくんのもとにきて、1日じっと動かないでみたと言います。

 

ひろくんは、どんな感じだったか聞きます。

 

きみちゃんは、「じっとして空を見ていたら、いつもの100倍くらい、色んなことを考えたし、わかったこともたくさんあった」と言います。

 

きみちゃんは、ひろくんのことを学者みたいだと褒めます。

 

ひろくんは、照れくさくて笑います。

 

今日もひろくんは、いつものように考えます。

 

宇宙のこと、分子のこと、古代のこと……。

 

それから、動けるってどんな感じかなぁとも。

 

この絵本では、ひろくんが障害のある友達の立場になって考えることで、物語が展開していきます。

 

ひろくんは、目の見えない友達や耳が聞こえない友達、さらには両親を災害で亡くした友達の立場になって、その友達がどういう風に感じているかを考えます。

 

そして、色々なことを感じ、感じたことを友達に話します。

 

さらに、物語が進んでいくと、ひろくん自身も障害を持っていることがわかります。

 

ひろくんは、車椅子に乗っています。

 

そして、友達のきみちゃんが、ひろくんの立場になり、1日動かないでみたと話しかけてきます。

 

きみちゃんは、動かないでいたことによって体験したことを、ひろくんに伝えます。

 

みんなが友達の立場になって考え、その友達の日常を想像することで、友達のすごさに気付きます。

 

相手の身になって考えることは、大事なことだと知りながら、なかなか実行することは難しいものです。

 

しかし、この絵本に登場するひろくんたちは、実際に相手の立場になって考えます。

 

そして、色々なことに気付きます。

 

相手になることはできませんが、相手の立場になって考えることはできるのです。

 

そこには、思いやりと想像力があります。

 

大事なことに気付かされる、そんな絵本です。

 

印象的なことば

 

うごけないって、すごいことなのかもしれないね。

ぼくって、すごいのかもしれないね。

 

 

ひろくんの言葉です。

 

きみちゃんの言葉を受けて、ひろくんはこう感じます。

 

他人に言われて、初めて気付くことってありますよね。

 

ひろくんの自信に満ちた表情が、ページいっぱいに描かれています。

 

感想

 

ひろくんが友達の立場になって、考えを巡らす絵本です。

 

シンプルなストーリーの中に、普段私たちが見落としがちな、大切なことが詰まっています。

 

相手の立場になって考えようと、学生時代に教えられた経験がある人も多いでしょう。

 

しかし、大人になって、それを実行できている人は、多くはないと思います。

 

相手の立場になって物事を考えるのは、なかなか大変なことです。

 

完全に相手の立場になることは無理でも、相手の気持ちを考えられる想像力のある人になりたいなと、改めてこの絵本を読んで思いました。

 

子どもはもちろんのこと、大人にも読んで欲しい絵本です。

 

 

どんなかんじかなあ

どんなかんじかなあ

 

 

 

 

 

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村 にほんブログ村 本ブログ 絵本・児童書へ
にほんブログ村