死ぬまでに読みたい絵本

子供と大人両方に読んでほしいけれど、特に大人が楽しめる、そんな絵本などを紹介するブログです。

キツネ

『キツネ』を読みました。

 

キツネ

キツネ

 

 

あらすじ

 

野火で羽に火傷を負ったカササギは、犬に助けられます。

 

羽を痛めたカササギは、もう二度と飛ぶことはできないのだと言い、投げやりになってしまいます。

 

そんなある日、犬はカササギを背中に乗せて走ります。

 

そこで、カササギは生きる希望を再び見出します。

 

犬とカササギは唯一無二の親友となります。

 

しかし、ある日犬とカササギのもとに、キツネが現れたことで……。

 

3匹の動物たちの間で渦巻く友情と孤独がリアルに描かれた絵本です。

 

見どころ

 

この絵本の見どころは、心の中にある孤独です。

 

野火で羽に傷を負ったカササギは、犬に助けられて一命はとりとめたものの、もう飛ぶことができないのだと悲しみに打ちひしがれます。

 

そんなカササギを、犬はなんとか元気付けようと「川の土手に出てみようよ」と誘います。

 

そして、犬はカササギを背に走り出します。

 

そこで、カササギは空を飛ぶような感覚を味わい、再び生きる希望を見つけます。

 

それからというもの、犬はカササギを背中に乗せて、走りに走ります。

 

そんなある日、ふたりのもとに、キツネが現れます。

 

カササギは嫌な予感がしますが、一方の犬はキツネを快く迎えます。

 

カササギは、キツネに用心するように犬に言いますが、犬はあまり深く考えていない様子です。

 

その夜、犬が眠っている間に、キツネはカササギに、犬を捨て自分と一緒に走らないかとささやきます。

 

カササギは、誘いを断ります。

 

しかし、カササギは次第に犬に不満を抱くようになり、キツネの誘いに乗ってしまいます。

 

そして、キツネはカササギを背に、走り出します。

 

カササギの気分は、すっかり有頂天です。

 

キツネたちは、赤い砂漠に到着します。

 

そこで、なんとキツネは、捨て台詞を吐き、カササギを残して立ち去ってしまいます。

 

カササギは、焼けるような暑さの砂漠にひとり取り残され、このまま死んでしまった方が楽かもしれないと考え始めます。

 

そんな時、ひとりぼっちになった犬の姿が目に浮かびます。

 

カササギは立ち上がり、犬を目指して長い道のりの旅に出ます。

 

この絵本では、心の中にある孤独がリアルに描かれています。

 

最初は、犬とカササギは唯一無二の親友でしたが、キツネが加わったことで、その関係性は次第に揺らいでいきます。

 

そして、キツネがカササギをそそのかしたことで、犬とカササギの友情はついに壊れてしまいます。

 

キツネは、犬とカササギを引き離すことに成功し、ふたりに孤独を味わうように仕向けます。

 

キツネのような孤独や嫉妬は、本来誰にでもあるものだと思います。

 

しかし、その感情をうまくコントロールしなければ、みんなとうまくやっていくことはできません。

 

キツネは、犬とカササギを引き裂くことはできたとしても、孤独から抜け出ることはできないでしょう。

 

本当に孤独から抜け出したいのなら、誰かと誰かを引き裂くのではなく、協調性を持ってみんなで助け合わなければなりません。

 

そのことをキツネが理解しなければ、キツネはいつまで経っても孤独なままでしょう。

 

誰もひとりでは生きてはいけないのです。

 

カササギも、ひとりでは生きていけないことがわかっているからこそ、再び犬のいる場所へ戻ろうとします。

 

心の中にある闇の部分が、よく描かれている1冊です。

 

印象的なことば

 

イヌさんをおいては行けないよ。わたしはかれの目なんだし、かれはわたしの羽なんだもの

 

キツネに誘われたとき、カササギが発した言葉です。

 

キツネの誘いに乗ってしまったカササギですが、この言葉からは犬とカササギの強固な結びつきが感じられます。

 

感想

 

3匹の動物の心の内を、見事に描き切った秀作です。

 

絵になんとも言い難い迫力があり、読者を物語の世界に引きつけます。

 

この絵本では、人が持つ醜い部分と美しい部分がリアルに描かれています。

 

醜い部分には、思わず目を逸らしたくなりますが、そこはしっかりと見つめなければなりません。

 

読み進めるうちに、友情、嫉妬、裏切り、孤独など様々なテーマが浮かび上がっていきます。

 

決して読みやすい作品ではありませんが、人間の深い部分にまで迫った必見の作品となっています。

 

 

キツネ

キツネ

 

 

 

 

 

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いいことってどんなこと

『いいことってどんなこと』を読みました。

 

いいことってどんなこと (こどものとも傑作集)

いいことってどんなこと (こどものとも傑作集)

 

 

あらすじ

 

わたしが住む北の国では、雪解けが始まります。

 

わたしが雪解けのしずくに、どうしてそんなにうれしいのか聞くと、しずくは「いいことがあるからよ」と答えます。

 

わたしは、しずくに誘われて外へ飛び出します。

 

その後、わたしは小鳥や川にも同じ質問をしますが……。

 

春の訪れの喜びを描いた絵本です。

 

見どころ

 

今回の見どころは、春の訪れです。

 

主人公のわたしは、窓の外から聞こえる水の音が気になり、思わず窓を開けます。

 

そこでは、しずくが跳ねて、歌って、踊っています。

 

その姿があまりにも嬉しそうなので、わたしはしずくに「どうしてそんなに嬉しいの」と尋ねます。

 

しずくは、「いいことがあるからよ」と答えます。

 

わたしは、その「いいこと」が何なのか気になり、外に出ます。

 

そして、わたしは小鳥に出会います。

 

わたしは、小鳥に「いいことってどんなこと?」と聞きますが、小鳥たちは遠くの方へ飛んでいってしまいます。

 

その後、わたしは川が元気よく流れているのを目にします。

 

そこで、またわたしは質問を投げかけます。

 

しかし、川はいいことの正体は教えてくれず、「見つけてごらん」と答えます。

 

そして、わたしは風に出会い、また同じ質問をしますが、風の言葉がわかりません。

 

さらに、わたしはリスに出会い、「一緒に遊ぼう」と誘いますが、わたしはリスを追いかけているうちに、転んでしまいます。

 

わたしは、雪の野原にひとりぼっちになってしまいます……。

 

転んだまま雪に頬をつけていると、雪の下から微かな歌声が聞こえてきます。

 

わたしは、足元の雪を両手ですくい、雪を掘っていきます。

 

すると、雪の中に金色の花が咲いているのが見えます。

 

わたしは、ついに「いいこと」の正体を見つけます。

 

それは、春の訪れだったのです。

 

この絵本では、春の訪れの喜びが描かれています。

 

その文章は、歌の歌詞のようで、読んでいるこちらまで楽しくなってきます。

 

自然や動物たちの、喜びの声が絵本から聞こえてきそうです。

 

そんな臨場感が楽しめるのが、この絵本の魅力です。

 

厳しい寒さの冬から、暖かい春が訪れる喜びが、絵本いっぱいに描かれた1冊です。

 

印象的なことば

 

わたしの むねも うたっていました。

 

いいことの正体がわからなかったわたしも、ついにいいことの正体を見つけ、心が高鳴ります。

 

まさに、春の訪れを感じる言葉です。

 

感想

今回は、今の季節にぴったりの作品です。

 

春の訪れの喜びが詰まった絵本です。

 

この絵本の舞台は雪国なので、春の訪れは都会に住む人の何倍も嬉しいはずです。

 

作者の神沢利子さんは、子ども時代を樺太で過ごされたそうです。

 

だからこそ、春の訪れを、こんなにも素晴らしく表現できるのですね。

 

北国の出身の人でなければ、冬から春の移り変わりを、ここまで詳細に描けないのではないかと思います。

 

それほどまでに、春の到来の表現が秀逸です。

 

春の到来を待ちわびながら読みたい1冊です。

 

 

いいことってどんなこと (こどものとも傑作集)

いいことってどんなこと (こどものとも傑作集)

 

 

 

 

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オリビア

『オリビア』を読みました。

 

オリビア

オリビア

 

 

あらすじ

 

こぶたの少女オリビアは、何でも上手にこなします。

 

逆立ちしたり、縄跳びしたり、オリビアは器用にこなします。

 

この通り、オリビアは何事にも全力で取り組むので、人や自分までもヘトヘトにさせてしまい……。

 

好奇心いっぱいのオリビアの日常を描いた絵本です。

 

見どころ

 

この絵本の見どころは、リビアの何事にも全力で取り組む姿勢です。

 

リビアは、お父さんと、お母さんと弟の4人家族です。

 

加えて、犬と猫も飼っています。

 

リビアが朝起きると、まず猫を連れ出し、歯を磨き、猫を元に戻し、それから服を着ます。

 

服を着る時は、全部試さないと気が済みません。

 

天気がいいと、オリビアは家族とともに海岸へ出かけます。

 

去年の夏、母親から砂のお城の作り方を教えてもらったおかげで、今ではとても上手になりました。

 

リビアは、毎日お昼寝するのが日課ですが、オリビアはちっとも眠くありません。

 

子供の頃って、「どこからそんなにパワーがでてくるの?」と思うくらい、元気ですよね。

 

リビアは、お昼寝なんかしなくても平気なのでしょう。

 

そして、雨の日にはオリビアたちは、美術館へ行きます。

 

リビアは、お気に入りの絵の前にすっ飛んでいきます。

 

絵本では、ニューヨーク・メトロポリタン美術館の所蔵するアート作品がそのまま登場しています。

 

イラストを見ると、エドガー・ドガジャクソン・ポロックの作品が登場しています。

 

リビアは、ジャクソン・ポロックの作品を「自分でも5分で描ける」と言い張り、家へ帰るとポロックの作品を真似て壁いっぱいに描きます。

 

そして、お風呂に入り、夕ご飯を食べた後は、いよいよ寝る時間です。

 

しかし、オリビアはちっとも眠たくありません。

 

そこで、母親に本を読んでもらいます。

 

最後は、オリビアがベッドで寝ながら、夢を見ているところで終わります。

 

リビアは、朝起きてから夜眠るまで、元気いっぱいです。

 

その元気さは、人や自分までをもヘトヘトにさせてしまうくらいのパワーがあります。

 

リビアは、随所で驚くべき行動力と才能を発揮します。

 

リビアのバイタリティーは素晴らしいものです。

 

彼女の姿勢を見習いたいものです。

 

しかし、無理のし過ぎは禁物です。

 

印象的なことば

 

ほんとに あなたには へとへとよ。でも なんてったって あいしてるからね

 

リビアに対する母親の言葉です。

 

リビアにヘトヘトにさせられるけれど、オリビアのことは大好きという気持ちが伝わってきます。

 

母親の優しい言葉に、オリビアもこう答えます。

 

「あたしもよ、なんてったって」。

 

感想

 

リビア・シリーズ第1作目の絵本です。

 

モノクロと赤で描かれたイラストが、おしゃれです。

 

アメリカの都会で暮らすぶたの家族がユーモラスかつスタイリッシュに描かれています。

 

リビアのバイタリティーには、目を見張るものがあります。

 

一般的に子どもは元気なものですが、ここまで元気で何事にも全力で取り組む子どもはなかなかいないのではないでしょうか。

 

それほどまでに、オリビアは元気いっぱいです。

 

元気なことは素晴らしい、その一方でオリビアが少し心配になってしまいます。

 

常に全力投球だと、いつか疲れが爆発してしまうのではないかということです。

 

人間時には、どこかで力を抜くことも大切です。

 

その点、大人になると力の抜き加減が上手になります。

 

そのため、オリビアがいつか、力をコントロールすることを覚えて、素敵な女性になる日がきたらいいなと思います。

 

しかし、今の何事にも全力投球なオリビアも、十分に魅力的です。

 

リビアの魅力がたっぷり詰まった本書を読んで、あなたもオリビアのファンになってみませんか?

 

 

 

オリビア

オリビア

 

 

 

 

 

ゼロ年代+の絵本【2000年】

今日から、ある企画をスタートさせたいと思います。

 

その企画とは……ゼロ年代+の絵本」です!

 

 

 

ゼロ年代+の絵本とは

 

ゼロ年代+の絵本とは、2000年代(2000〜2009年)に国内で出版された絵本を、1年ごとに10冊セレクトし、紹介していく企画です。

 

ゼロ年代に出版された、個性豊かな絵本を紹介していきます。

 

厳密に言うと2000年代ではありませんが、日本では2011年3月11日に「東日本大震災が起こりました。

 

そんな大きな出来事と絵本は、実は無関係ではありません。

 

映画や小説と同じように、絵本でもそのような出来事が描かれているのです。

 

もうお気付きの方もいらっしゃると思いますが、ゼロ年代+の+(プラス)とは、3.11以降の絵本のことです。

 

そこで、ゼロ年代+の絵本では、3.11に関連する絵本も紹介していきたいと思います。

 

また、今週は頑張って毎日ブログを更新しましたが、これからは週に一度のペースで更新していくことになると思います。

 

ゼロ年代+の絵本を、すべて紹介するまでにはかなりの時間を要すると思われますが、頑張って紹介したいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

 

さて、本題に移る前に、今回はこのブログを始めるに至った経緯を、お話ししたいと思います!

 

ブログを始めるまでのお話し

 

去年の9月に始めたこのブログも、気が付けば約半年が経ちました。

 

この調子で、これからも続けていきたいと思います!

 

今では絵本が大好きな私ですが、実は大人になってから絵本を最近まで読んでいませんでした。

 

それまでは、社会人になってからだと、主に小説や心理学、自己啓発本や仕事関係の本、その時々に関心のあるジャンルの本を読んでいました。

 

しかし、いつも長い文章ばかり読んでいると、段々と疲れてきます……

 

そんな時、以前購入して、まだ読んでいなかった絵本を読むことにしました。

 

その絵本が、こちらです。

 

 

ehon0016.hatenablog.com

 

この絵本を読んで、私は絵本にハマりました。

 

簡潔な文章とイラストで、こんなに人の心を動かすことができる絵本ってすごいなと感じました。

 

また、短時間で読めるのに、心の満足度や充実度が、普通の本と同じくらい、若しくはそれ以上に高いということに驚きました。

 

それ以来、家にある絵本を読んだり、図書館で絵本を借りてきて読むようになりました。

 

何冊か読んだ後、読んだ絵本の感想を書いたり、それを発信したいと思うようになり、このブログを始めました。

 

当初、絵本を紹介するブログにしようということは決めていたのですが、どんな方向性にしようかということを、少し悩みました。

 

そんな時に、家にあった本が参考になりました。

 

その本が、こちらです。

 

 

死ぬまでに観たい映画1001本 改訂新版

死ぬまでに観たい映画1001本 改訂新版

  • 作者: スティーヴン・ジェイシュナイダー,野間けい子
  • 出版社/メーカー: ネコ・パブリッシング
  • 発売日: 2015/01/10
  • メディア: 大型本
  • 購入: 2人 クリック: 153回
  • この商品を含むブログ (13件) を見る
 

 

私は元々映画が好きで、学生時代には、週に2.3回映画館に通っていた時期もありました。

 

そのため、この本は当時バイブルのような存在で、一時期はこの本に載っている映画を全部制覇するのが目標になっていました。

 

今でも、この本に載っている映画を出来るだけ多く見ることが、ゆるーい目標となっています。

 

話が少々脱線しましたが、この本の絵本バージョンを作りたいと思い、このブログの方向性が決まりました。

 

1001冊も絵本を紹介するのは、至難の技ですが、できる限り多くの良質な絵本を紹介したいと思っています。

 

その際、自分が大人になってから絵本にハマり出したということもあり、大人も楽しめる絵本を紹介していこうと決めました。

 

少し長くなりましたが、以上がこのブログを始めるまでのお話しとなります。

 

また、余談ですが、こちらの本もオススメです!

 

死ぬまでに聴きたいアルバム1001枚

死ぬまでに聴きたいアルバム1001枚

 

 

こちらの本に載っているアルバムをできる限り多く聴くことも、私のゆるーい目標です。

 

ゼロ年代+の絵本【2000年】

 

さて、ようやく本題に移りたいと思います!

 

ここからは、2000年に日本で出版された絵本を10冊紹介したいと思います。

 

①いたずらかいじゅうのたんじょうび

 

ehon0016.hatenablog.com

 

 

②うるわしのセモリナ・セモリナス

 

ehon0016.hatenablog.com

 

③きりのなかのはりねずみ

 

ehon0016.hatenablog.com

 

 

④白バラはどこに

 

ehon0016.hatenablog.com

 

 

⑤トゥートとパドルーいちばんすごいプレゼントー

 

ehon0016.hatenablog.com

 

 

⑥ぼくおかあさんのこと…

 

ehon0016.hatenablog.com

 

 

⑦ぼくのいぬがまいごです!

 

ehon0016.hatenablog.com

 

 

⑧満月をまって

 

ehon0016.hatenablog.com

 

 

⑨桃子

 

ehon0016.hatenablog.com

 

 

⑩リサ ひこうきにのる

 

ehon0016.hatenablog.com

 

 

2000年は、海外の絵本が多めですが、国内の絵本も個性豊かな作品が揃っています。

 

個人的には、「満月をまって」が特に印象的でした。

 

職人の静かな情熱や誇りに、感動しました。

 

また、「桃子」は今までに読んだことのないタイプのストーリーの絵本で、印象に残っています。

 

恋愛の形にもいろいろあるのだなぁと、感じました。

 

以上が、ゼロ年代+の絵本の2000年版でした。

 

気になった絵本がありましたら、ぜひ読んでみてください。

 

あなたの心の1冊が見つかったら幸いです。

 

それでは、次回もお楽しみに!

 

 

 

桃子

『桃子』を読みました。

 

桃子

桃子

 

 

あらすじ

 

両親を交通事故で亡くした桃子は、引き取り手の伯母夫婦が海外から帰国するまでの間、山寺に預けられることになります。

 

桃子は、そこで青年僧の天隆と出会います。

 

無口で笑わない桃子が、天隆の前ではよく笑うようになります。

 

ふたりはいつしか惹かれ合うようになります。

 

しかし、ふたりの交流は、やがて思いがけない結末へと向かい……。

 

桃子と修行僧の天隆の恋物語が描かれた絵本です。

 

見どころ

 

この絵本の見どころは、人を愛する気持ちです。

 

山寺に預けられた桃子は、そこで修行僧の天隆と出会います。

 

桃子と天隆は、次第に惹かれあいます。

 

そんなある日、天隆と桃子が和尚さんの部屋にふたりしてやってきます。

 

天隆は、山を降り、仕事を見つけて桃子と暮らしたいと言います。

 

しかし、桃子と天隆は、12歳も歳の差があります。それに、桃子は大事な預かりものです。

 

案の定、和尚さんは反対します。

 

その後、寺に再び穏やかな日々が訪れます。

 

天隆は受所係の修行僧に戻り、桃子もおとなしく過ごします。

 

そして、ついに桃子が伯母夫婦に引き取られ、山を降りる日がきます。

 

桃子がいざタクシーに乗ろうとした時に、驚くべき事態が起こります。

 

なんと、桃子はくちばしの赤い、きゃしゃな白い小鳥になり、飛び去ってしまいます。

 

そして、なんと一方の天隆の頭には、青い花が咲き、すくすくと成長します。

 

その半年後、白い小鳥が戻ってきて、天隆の頭の上に住み着きます。

 

物語の最後は、和尚さんの言葉で締めくくられます。

 

なんとも不思議なお話ですが、孤独なふたりが織りなす純愛が美しい絵本です。

 

この絵本から、人を愛する気持ちがひしひしと伝わってきます。

 

桃子と天隆のふたりは惹かれあいますが、お互いに好きになってはいけない相手です。

 

ふたりの恋が成就することは、極めて難しい状況です。

 

しかし、ふたりのお互いを想う気持ちは止められません。

 

最後は、ふたりは姿を変えて、一緒になります。

 

ふたりの強い想いが伝わる絵本です。

 

印象的な言葉

 

人を恋するということはえらいことですわなぁ。

 

最後に、和尚さんが言う言葉です。

 

本当にその通りだという言葉ですね。

 

感想

 

この絵本は、江國香織さんの「つめたいよるに」に収載された短編を絵本にしたものです。

 

子供向きというよりは、大人にじっくり味わって読んでほしい1冊です。

 

予想外の結末に驚きましたが、桃子と天隆の純愛は読後に深い余韻を残します。

 

ここまで、人を愛することは、人の一生でなかなかないのではないでしょうか。

 

それほどまでに、人を強く想う気持ちが描かれています。

 

それにしても、桃子の魅力はすごいものですね。

 

7歳にして、19歳の修行僧を虜にするその色気は、すさまじいものだったことでしょう。

 

その魅力は、和尚さんにまで「一種色っぽい感じがしたものです」と言わしめたほどです。

 

さぞかし美少女だったのでしょう。

 

桃子と天隆の禁断の愛が描かれた作品ですが、ふたりの想いはピュアなもので、ドロドロした様子はなく、むしろ読後さわやかな心地さえしました。

 

桃子と天隆の想いが、強く心を打つ絵本です。

 

 

桃子

桃子

 

 

白バラはどこに

『白バラはどこに』を読みました。

 

白バラはどこに (詩人が贈る絵本)

白バラはどこに (詩人が贈る絵本)

 

 

あらすじ

 

時代は、第二次世界大戦下のドイツ。

 

「白バラ」という名の少女が住む小さな町にも、戦争はやってきました。

 

ある日、逃げようとするひとりの少年を乗せて走り去るトラックを目撃した少女は、その後を追います。

 

少女は、町をはずれ、広い野に出て、見たこともない森へ出ます。

 

そして、森の中の切り開かれたところで少女が見たのは……。

 

第二次世界大戦下を生きる少女の冷酷な運命を描いた絵本です。

 

見どころ

 

今回の見どころは、目を背けたくなるような現実です。

 

舞台は、第二次世界大戦下のドイツの小さな町です。

 

ある日、逃げようとするひとりの少年を乗せて走り去るトラックを少女が目撃します。

 

少女はその後を追いかけます。

 

そして、少女がたどり着いた先に見たものは、鉄条網を隔てた向こう側の大きな木造の建物と、その前に立つ痩せた子供たちでした。

 

それは、ユダヤ人の収容所でした。

 

その後、少女は誰にも知られないように、収容所へ食料を運びます。

 

ある朝、町中の人たちが、町から逃げ出します。

 

そんな中、少女は再び森の中へ入って行きます。

 

そこで、少女は兵士に撃たれてしまいます……。

 

少女のお母さんは、いつまでも少女が帰ってくるのを待っていましたが、少女は一向に帰ってきません。

 

そして、また春がやってきます。

 

ここで、この絵本は終わります。

 

この絵本で描かれているのは、冷酷な現実です。

 

初めて読んだときは、その衝撃的なストーリーに、思わず驚きました。

 

多くの絵本は、魔法や空想などのファンタジー的要素が含まれていて、読みやすいものが大半なのですが、この絵本はそういった絵本特有の甘さがありません。

 

そこにあるのは、目を背けたくなるような現実です。

 

しかし、この物語は悲惨なだけでは終わりません。

 

最後の方には、暗く寒かった冬が終わり、春が訪れます。

 

クロッカスが地面から芽を出し、川の水は土手からあふれ、木々には鳥たちがいっぱいやってきます。

 

ハッピーエンドではありませんが、そこには救いもちゃんとあるのです。

 

この絵本を読む際には、どうか目を背けずに直視して、戦争の恐ろしさや平和の素晴らしさを感じて欲しいと思います。

 

印象的な言葉

 

春がうたっていました。

 

絵本の最後の言葉です。

 

どんなに悲惨な状況でも、やがては春が訪れます。

 

感想

 

ホロコーストのことが描かれた絵本です。

 

ホロコーストとは、第二次世界大戦中のナチス・ドイツがユダヤ人に対して行った迫害・殺戮のことです。

 

戦争の落とす影が、詩的な文章と、美しく精巧な絵とともに描かれています。

 

悲惨な現実を伝える物語ですが、それだけではなく平和も謳っています。

 

現代の日本で暮らす私たちにとって、この絵本の舞台となった時代は馴染みのないものですが、この絵本のメッセージを読み取り、共感することはできます。

 

戦争のない現代の日本だからこそ、こういった絵本を読んで、平和の素晴らしさを改めて感じることが大事だと感じます。

 

現代を生きる私たちが、読むべき絵本のひとつだと言えるでしょう。

 

 

白バラはどこに (詩人が贈る絵本)

白バラはどこに (詩人が贈る絵本)

 

 

 

うるわしのセモリナ・セモリナス

『うるわしのセモリナ・セモリナス』を読みました。

 

うるわしのセモリナ・セモリナス―小麦粉うまれの王子さま

うるわしのセモリナ・セモリナス―小麦粉うまれの王子さま

 

 

あらすじ

 

むかしむかし、ギリシャの国に、アレティという王女がいました。

 

アレティ姫にプロポーズした男の人は数えきれないほどいましたが、どの人もどうしても好きになれません。

 

ある日、姫はいい考えを思いつきました。

 

それは、自分で恋人をつくるということでした。

 

姫は、ついに理想の男性を作り上げます。

 

ところが、このことを世界の果ての悪い女王が聞きつけて……。

 

ギリシャの伝統的な民話が、再話によって復活した絵本です。

 

見どころ

 

この絵本の見どころは、アレティ姫の行動力です。

 

姫に寄ってくる男性は星の数ほどいましたが、どの人も好きになれず、姫は自ら理想の男性セモリナ・セモリナスさまを作り上げます。

 

これだけでも相当な行動力ですが、この物語はここで終わりません。

 

その後、悪い女王がその噂を聞きつけて、セモリナ・セモリナスさまを船に閉じ込めて、連れ去ってしまいます。

 

そのことを知った姫は、頑丈な鉄の靴を3足作らせ、旅に出ます。

 

姫は、道の途中で出会う人々に、セモリナ・セモリナスさまの行方を聞いて回ります。

 

しかし、なかなか有力な情報を手に入れることができません。

 

その代わりに、姫は困ったときに使える木の実をもらいます。

 

その後、ようやくセモリナ・セモリナスさまのことを知っている星に出会い、セモリナスさまの行方がわかります。

 

そして、姫は困ったときに使える木の実に助けられ、セモリナ・セモリナスさまの機転も功を奏し、ふたりは船でギリシャに帰り、いつまでも幸せに暮らします。

 

自分で連れ去られた恋人を遠くの国まで助けに行き、見事助け出す姫のバイタリティーに脱帽です。

 

もし、姫が自分からは行動しないタイプの女性だったら、このハッピーエンドは迎えられません。

 

ここでの姫は、「自分の幸せは自分で掴み取る」というパワフルな女性として描かれています。

 

そんなアレティ姫の行動力には、学ぶところがたくさんあるように思います。

 

理想の男性を作り出すことはさすがに無理かもしれませんが、理想の男性を見つけ出すことはできるかもしれません。

 

もし、好みの男性がなかなか現れない場合は、待っているだけではなく、アレティ姫のように、考えるよりも行動してみるといいかもしれませんね。

 

印象的なことば

 

人を「すき」とおもう気もちが、そんなまほうをおこしたのでしょう。

 

アレティ姫とセモリナ・セモリナスさまの気もちが通じ合ったからこそ、セモリナスさまは目覚めました。

 

人をすきと思う気もちは、ときに偉大な力を発揮します。

 

感想

 

ジゼル・ポターのユーモラスなイラストを得て、ギリシャの伝統的な民話が再話によって復活し、出来上がった絵本です。

 

ギリシャの昔のお話ですが、思いがけず現代的な要素もあり、読みやすくなっています。

 

アレティ姫やセモリナ・セモリナスさまの人を強く愛する気もちが、描かれています。

 

姫の行動力には驚かされますが、これも人を好きという気もちがなせるわざですね。

 

それほどまでに、セモリナ・セモリナスさまのことが好きなのだということが伝わってきて、なんとも微笑ましくなります。

 

日本の昔話では、お姫様は基本待っていることが多く、自分からは動かない印象です。

 

そんな日本の昔話に親しんできたので、アレティ姫のような女性像は目から鱗でした。

 

アレティ姫からは、「欲しいものは自分から掴み取る」という強いバイタリティーを感じます。

 

そんなアレティ姫の行動力は、日本の女性や男性も、見習う価値があるものだと思います。

 

恋愛でもう1歩踏み出したい人にもオススメの絵本です。

 

 

うるわしのセモリナ・セモリナス―小麦粉うまれの王子さま

うるわしのセモリナ・セモリナス―小麦粉うまれの王子さま